今月の旅指南

2009年10月28日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 

 陶芸をはじめ書・絵画・漆芸・篆刻〔てんこく〕・金工など、さまざまな分野で、個性あふれる作品を数多く生み出した北大路魯山人(1883~1959年)。亡くなって50年になるが、その人気は衰えることを知らない。

北大路魯山人「志野すゝき四方鉢」1955年
(何必館・京都現代美術館所蔵)

 そんな魯山人の“美の本質”に迫る、これまでにない展覧会が、何必館〔かひつかん〕・京都現代美術館で開催中だ。展示されているのは、魯山人に魅せられ、その生涯を45年間追い求めてきた梶川芳友館長のコレクションの中から、厳選された代表作約120点。作品の質の高さはいうまでもないが、特に注目したいのはこだわりの展示方法だ。梶川氏によると、

 「私は45年間、生活の中で魯山人の器を使い続けてきましたが、その中で一番感じたことは、魯山人の作品は使うことで美しさがより輝くということでした。そこで、今回の展覧会では、作品と根来板や李朝棚などを取り合わせることで、使った状況を感じさせる、ひと味違った展示演出に挑戦しました」

 たとえば、「つばき鉢」を置く台は、戦国大名斎藤道三が築城した稲葉城の古材。「黒織部沓〔くつ〕」には魯山人と同時代の茶人、益田鈍翁〔どんおう〕(1848~1938年)の更紗の袱紗を合わせている。ちなみに、この「黒織部沓」は昭和29(1954)年にニューヨーク近代美術館で展覧会に出品されたものを、30年ほど前に梶川氏が買い求めたものだとか。

北大路魯山人「雲錦鉢」1938年
(何必館・京都現代美術館所蔵)

 「魯山人を知る人は、その傲岸不遜ぶりを謗〔そし〕りますが、日々、魯山人作品に接して抱く思いは、彼の純粋さ、優しさです。だれも振り向かない小さなもの、脇のもの――たとえば建水〔けんすい〕や箸置きなどもないがしろにせず、愛情を注いで作っている。また彼は、生涯をかけて“和の美”と“食”を追求しました。あらゆることが西洋化し、“和の美”が隅に追いやられてしまった現在、魯山人の世界に触れることで、もう1度、その大切さを思い出していただけるとうれしいですね」

 魯山人の作品は時代を超え、なぜ多くの人を魅了するのか。彼は作品を通して何を訴えようとしたのか。この秋、何必館でその答えが見つかるにちがいない。

 
*茶道具の1つで、茶碗をすすいだ湯水を捨てる容器
 
 

 

 

没後50年 何必館コレクション—生活の中の美—「北大路魯山人」展
京都市東山区・何必館・京都現代美術館(京阪本線祇園四条駅下車)
〈問〉075(525)1311
http://www.kahitsukan.or.jp/frame.html
〈巡回展〉静岡コンベンションアーツセンター「グランシップ」
2009年12月11日~2010年1月11日 会期中無休

◆関連記事 「【特別取材】料理家 魯山人の器づくり
――何必館・京都現代美術館 梶川芳友館長

◆「ひととき」2009年11月号より

 

 



 

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