WEDGE REPORT

2015年12月26日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

トランプまでもが批判 行き過ぎた薬価つり上げ

 シャリが全国的な批判を浴びたのは、チューリング製薬がダラプリンという薬の販売権を手に入れたことにある。この薬はエイズの症状のひとつ、トキソプラズマの特効薬だが、シャリが薬の権利を手に入れて以降、その価格は1錠13ドル50からなんと750ドルに跳ね上がった。

 薬を必要とする人口は比較的少数だ。しかし「マイナーな疾病の特効薬」を狙い撃ちしていたのは、これが目的だったと考えられる。マイナーな薬だけにライバルがいない。独占状態で薬の価格を吊り上げたのだ。

 これにはヒラリー・クリントン、バラク・オバマに加えドナルド・トランプまでがこぞって批判、シャリはまさしく時の人となったが、その直後の逮捕である。シャリ自身が「政府は自分のように頭角を表す人間を潰したかった。逮捕の本当の理由は薬の価格吊り上げでヘッジファンド問題ではない」などとメディアに訴えている。

 薬の価格吊り上げについては「株式会社として投資家により多くのリターンを約束するのは当然のこと」と全く悪びれていない。実はこうした独占状態にある薬の価格吊り上げは多かれ少なかれどの製薬会社も行っている。製薬会社は「薬の開発には多額の研究開発費用がかかっている」と主張するが、ライバルのいない特効薬ともなれば価格は製薬会社の言い値で販売されているのが実情だ。

評価分かれるシャリの手法

 それにしてもシャリの手法はやり過ぎの感は否めない。「儲けてどこが悪い」と開き直るシャリにはネット上で共感する若者も多いが、社会の敵とみなされる行為であることは間違いない。

 ただし、シャリを擁護する声もある。マイナーな特効薬にFDA(米食品医薬局)の承認を取り付けたのはシャリの功績、という意見だ。例えばチャガス病、という南米に特有の風土病のような疾病がある。南米移民の多い米国では患者数もそれなりだが、このチャガス病の特効薬をFDAに認めさせたのはシャリである。

 今後の裁判でシャリの罪状が明らかにされていく予定だが、今回の逮捕劇はシャリが主張するように「政府の陰謀」なのか、それともシャリは「稀代の詐欺師」なのか。金融界の若きエースと呼ばれた人物の転落劇は全米の注目を浴びている。

  
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