海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年3月16日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

獲得できない白人男性票

 戸別訪問を実施する前まで、筆者はクリントン陣営が標的としている労働組合員は、当然クリントン候補の支持者だと思い込んでいました。実際に戸別訪問を行ってみますと、同候補に対して厳しい意見を述べる組合員が少なくないのです。 

雪の中での戸別訪問(@ミシガン州デトロイト)

 例を挙げてみましょう。標的となっているある組合員の家を訪問し、「あなたが所属している組合は、ヒラリー・クリントン候補を大統領に推薦しています」と印刷されたパンフレットを見せた途端に、突然怒鳴られました。

 「おまえは、まったく間違った家を訪問している! ヒラリーなんかいらない!」

 テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)の支持者でした。

 クリントン陣営のボランティアであることを告げると、憎悪の表情をして怒り始めた組合員もいました。

 「出ていけ! オレはトランプの支持者だ!」

 この有権者の表情は、今でも目に焼きついています。

 ミシガン州民主党予備選挙では、自由貿易が焦点になりました。戸別訪問の際、国際貿易協定に関して標的となっているある組合員が次のように述べていました。

 「ヒラリーはNAFTA(北米自由貿易協定)に賛成しましたから、サンダースに傾いています。TPP(環太平洋経済連携協定)についても、サンダースの方がヒラリーよりも早く反対しました。ヒラリーがTPPについて反対しても、私の心には響きません」

 クリントン候補は、国務長官時代はTPPに賛成していましたが、大統領に出馬すると曖昧な発言をし、サンダース上院議員に追い上げられると反対の立場に回りました。この組合員は、風見鶏的な態度をとるクリントン候補は本物ではないと、とらえていたのです。

  上で紹介した労働組合員は、すべて白人男性です。ウォール・ストリート・ジャーナルと米NBCニュースによる出口調査をみますと、ミシガン州民主党予備選挙において、クリントン候補はサンダース上院議員と比較すると白人男性の票を獲得できていません。この傾向は、同州のみならず、南部テキサス州、東部ニューハンプシャー州及び中西部アイオワ州でも顕著に現れています。

 若者票に加えて、白人の男性票が期待できないクリントン候補は、どの州においてもアフリカ系及びヒスパニック系の票に依存する選挙運動を展開しています。現在、筆者が活動しているフロリダ州マイアミ・ビーチでも同様の選挙運動をしています。裏返せば、同候補は白人が占める割合の高い州で、取りこぼす可能性があるということです。

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