2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月24日

 米ボストン大学のグリムス教授が、Asan Forumのウェブサイトに4月15日付で掲載された論説にて、中国の一帯一路イニシアティブが、「ゲームチェンジャー」になること、および、中国がイメージするような地域の秩序が作られることに懐疑的な見方を示しています。論説の骨子は次の通り。

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一帯一路イニシアティブ考察に必要な3つの視点

 一帯一路イニシアティブは単なる経済的なプロジェクトではなく、政治的な影響も当然ある。経済の政治的な影響力への転換は、取引的影響力、構造的影響力、ソフトパワーの三つの視点から論じることができる。取引的影響力とは、本質的には対価を与えることであり、相手にわが方に好ましい行動をとらせるために必要な資源を十分に保持していることが重要である。構造的影響力は、大きく分けて二種類存在する。一つは「依存」状態を作り出し、経済的に弱い国家が強い国家の意向に従って行動するように仕向けるものである。もう一つは、大国がルールやシステムを作り、他の国の行動を規定するものである。中国はアメリカ主導の現在のルールに不満を持っている。ソフトパワーは本質として、他者を惹きつけ、説得する力である。

 一帯一路イニシアティブは往々にしてマーシャルプランと比較されるが、1980年代から1990年代の日本の方がより適切な比較事例である。日本の雁行モデルと中国の一帯一路イニシアティブにももちろん、多くの相違点がある。日本は当時技術の最先端を走っていた。それに対して、中国は技術ではなく、資金の供給者でしかない。また、中国の経済は巨大であり、日本と異なり、将来的に米国のグローバルな政治的なライバルとなる可能性もある。だが日本との比較は意味がある。

インフラ投資の政治的利用は不可能

 日本の経験から得られる、一つの教訓として、大規模かつ調整された商業的インフラ投資は受容国に対して大きな利益をもたらす。その意味で、中国のイニシアティブは中国の意図に関わらず、関係諸国の物質的な福祉に貢献するだろう。しかし同時に、中国の指導者が政治的に利用するのは難しい。日本に限らず、アメリカやソ連のような超大国も経済的な従属国をコントロールすることは不可能であった。


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