2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月1日

 豪州の潜水艦建造をフランスが日本を退けて勝ち取ったことについて、4月26日付ウォールストリート・ジャーナル紙社説は、中国から豪州への圧力を指摘し、インド太平洋のシーレーンを守るには地域の民主国家間の協力と十分な数の潜水艦が必要である、と述べています。社説の要旨は以下の通り。

北京を訪れ、中国軍を前に李克強首相と肩を並べるオーストラリアのターンブル首相(Getty Images)

潜水艦建造受注で仏に負けた日本

 4月26日、マルコム・ターンブル豪首相は、12隻の潜水艦建造の契約(400億ドル相当)を仏の軍事企業に受注させる旨を発表した。それは、日本の入札の敗北であり、中国の軍事的台頭に直面する太平洋の指導的民主国家間の協力深化の機会の喪失である。

 ターンブルは、「仏の提案は、長距離作戦を含む、豪州の独自のニーズを最も満たすことのできる能力を示した」との国防当局者の「明確な」推薦に基づいて決定した、と言う。仏国営DCNS社は、Barracuda型原潜(5000トン)の、静粛性の高いポンプ・ジェット推進装置を備えた4500トン・ディーゼル・エレクトリック仕様を建造することになる。

 7月に国政選挙が迫り、国内の労働者への影響も重要だった。ターンブルは、とりわけ、補助金カットで自動車工場閉鎖に直面している接戦区で、豪州の労働者が豪州産の鉄鋼を用いて豪州の潜水艦を造ることを約束した。

 しかし、全ての入札者が豪州内での建造に賛成していたので、それは、三菱重工により洗練された4000トンの「そうりゅう」型潜水艦を建造することを提案した日本に仏が勝った理由の説明にはならない。豪州筋は、日本の問題は、非効率的な乗組員スペースから複雑な軍事技術を輸出する際の企業経営陣と当局者の経験不足(日本は2年前までこの種の輸出を禁じていた)にわたる、と言っている。


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