世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月3日

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 これらのプロジェクトには国民の反発が見込まれるが、新政権が目指す経済成長には中国からの投資が不可欠であり、スーチーはこのことを国民に納得させようとしている。

経済問題以上の懸案

 中国との関係でさらに厄介なのが少数民族問題だ。国境地帯では長年不穏な動きが続いている。1年前には、北部シャン州コーカン地区で反政府組織と戦闘中、ミャンマー軍が中国領内に入り、中国人を爆撃、殺害する事件があった。ミャンマーの反政府組織はいずれも、中国と血縁、歴史的関係がある。コーカン族は中国語を話す漢族であり、中国人と共にミャンマー軍と戦った可能性がある。カチン族、シャン族、パラウン族などは国境の両側に居住、中国に支援され、中国語と中国の通貨を使う民兵組織もある。彼らと数世紀来の絆がある雲南の人々の利害は、北京の中央政府の目的と一致しないことも多い。

 中国も表向きは国境地帯の安定を望んでおり、3月に、駐ミャンマー中国大使は反政府組織との「和平の推進」と「物的、財政的支援」を約束、王外相も、少数民族との「平和的和解」を支持すると述べた。しかし、中国は長年、ミャンマー軍事政府と種々の協定を結ぶ一方で、反政府組織に資金を提供してきており、これが今後変わるのか不明だ。支配力維持に躍起な軍も、スーチーによる少数民族との交渉を邪魔する可能性がある。

 もっとも、中国側もミャンマーは政治的変化を遂げ、立場が変ったことはわかっている。記者会見で王外相は、中国企業は「ミャンマーの社会的慣習を尊重」し、「地元の生態と環境」は守らねばならないと述べた。今のミャンマーには他にも求婚者がおり、もはや中国もカネでたやすくミャンマーの好意を買うことはできない。

出典:‘High mountains, distant emperors’(Economist, April 23-29, 2016)
http://www.economist.com/news/asia/21697287-aung-san-suu-kyi-extends-wary-welcome-china-tries-regain-lost-influence-high-mountains

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