世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月8日

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 EUとNATOは共にブリュッセルに本部があり、共通の加盟国も22カ国ありながら、これまで必ずしも緊密に協力してこなかったが、パリ同時多発テロ、大量の難民流入、ロシアによるハイブリッド戦争等の新たな脅威に直面して、両者の協力は促進されるだろうと、5月7-13日号の英エコノミスト誌が述べています。要旨は以下の通りです。

NATO(左)とEUの旗(iStock)

 EUとNATOは、過去に協力することはあったが、共に行動するよりも並行して行動する傾向が強く、無駄な重複や混乱を生んできた。こうなった原因の一つは、北キプロスの帰属をめぐるトルコとキプロスの対立で、キプロスはことあるごとに両者の協力を阻んできた。また、米英も、独仏が目指すEU軍事計画本部の設置に疑義を抱き、EU軍構想を冷笑してきた。

 しかし、差し迫る新たな危機は、否応なく変化をもたらす可能性がある。ロシアがウクライナで展開したような、戦争と平和の境目が曖昧なハイブリッド戦争(通常戦力・政治的破壊・偽情報を駆使)に対しては、外交・通信・軍事・経済資産を総動員した対応が必要だ。

 こうした脅威に直面して先ず重要なのは、何が起きているかを理解し、自らの弱点を知ることで、これはつまり、EUとNATOは情報や分析を共有し、自分たちのネットワークをサイバー攻撃から防衛する、また、東欧の石油・ガスパイプライン等の重要インフラを防御し、通信の連携によって偽情報に対抗するということだ。

 ストルテンベルグは、7月のサミットの成果として、①ハイブリッド・海洋・サイバー安全保障協力に関するEU=NATO共同声明、②ハイブリッド戦争の種々のシナリオに対処するための脚本作り、③NATO=EU合同演習の来年の実施を期待している。

 もっとも、シリア、イラク、リビアを席巻しつつある混乱にどう対応するのかははっきりしていない。NATOとEUはリビア新政府の要請があれば、軍民の機関の構築を支援するだろう。またNATOは、エーゲ海やトルコ=シリア国境での情報収集・監視によってFrontex(欧州対外国境管理協力機関)による密入国や不法な難民流入防止に協力している。さらに、ストルテンベルグは、トルコの将校がエーゲ海のNATO船団に乗り組んでいることを、NATO主導のEU=トルコ協力の例として挙げている。

 NATOとEUの関係改善は進んでいるが、EUの政治家たちがもっと真剣にならない限り、多くの関係者は両者の協力について懐疑的なままだろう。「役人レベルの活動は活発だが、大きな課題は政治面にある」と専門家は指摘する。現実の危機において、EUの時間のかかる意思決定は作戦計画が想定するような迅速な対応を妨げかねない。また、彼は、北キプロスに関する合意成立で状況は一変すると言う。

 米国は、NATOとEUの協力を歓迎しているが、本当に求めているのは同盟諸国の防衛費の拡大で、ストルテンベルグも、米国がNATOのコストの72%を負担し続けるのは無理だと認めている。ただ、彼は、昨年、欧州の防衛費縮小が止まり、16カ国が防衛費を増やしたことも指摘し、「長い道のりの第一歩」だと言っている。

出 典:Economist ‘Buddy cops’ (May 7-13, 2016)
http://www.economist.com/news/europe/21698248-new-threats-are-forcing-nato-and-eu-work-together-buddy-cops

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