2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月20日

 金正恩第一書記は、今次党大会で党委員長になりました。彼は、党大会での事業総括報告において、軍事優先政治の下で経済建設と核武力建設を併進させる戦略的路線の堅持を強調し、北朝鮮が3回の地下核実験と初の水爆実験の成功により世界的な核強国の戦列に堂々と立つことになったと述べ、更に、北朝鮮は責任ある核保有国として、敵対勢力が核で同国の自主権を侵害しない限り、先に核兵器を使用することはせず、また、核拡散防止の義務を誠実に履行して世界の非核化実現に努力すると述べています。

核を放棄する考えはない

 金正恩は、核拡散防止の義務を述べているだけで、自国の核を放棄する考えはないことを明らかにした発言と言えるでしょう。5月17日付の労働新聞の論説も「米国の対北朝鮮敵視政策と核の脅威の根源的清算がない限り、わが方が先に核を放棄することは絶対にないであろう」と述べています。

 上記ウォール・ストリート・ジャーナル紙が指摘する通り、国際的制裁を受ける中で、北朝鮮が経済建設と核武装の併進路線を継続することは容易ではありません。金正恩は、今回の事業総括報告において、社会主義経済強国建設について多くの時間を割き、さしあたって2016年から2020年までの国家経済発展5カ年戦略を徹底して遂行すべきことを強調しています。

 北朝鮮が本格的な核保有国となることは、中国の国益にかなうこととは必ずしも言えません。さしあたり、二次的制裁の強化を図りつつ、中国にも呼び掛けて、北朝鮮に対する制裁を強化していくことは有益でしょう。金正恩にとっても、経済情勢が悪化する中で、国民の不満を抑えていくことは難しいはずです。


  
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