2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月20日

 5月15日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙が社説で、今度こそ北朝鮮に対する制裁を厳しく履行することにより体制変換を目指すべきであると論じています。要旨は、次の通りです。

 36年振りに開催された先般の朝鮮労働党大会において、金正恩は新たに党委員長に推戴され、演説では予想通り核開発と経済建設を強調した。しかし、何時もの自慢話や虚勢の裏で、「若き元帥」の体制はストレスに曝されている。

 3月末、国営メディアは、新たな「苦難の行軍」に備えるよう国民に呼びかけた。食糧とガソリンの価格高騰は、北朝鮮が必需品の備蓄を始めたことを示唆する。

 10年振りに国際的制裁が北朝鮮に影響を与える可能性が出てきた。北朝鮮の4回目の核実験に対し、3月2日、国連安保理は決議2270を採択し、北朝鮮の石炭や鉱産物を輸入することを禁止した。金融取引の規制を強化し、さらに、ブラックリストを作成して特定の貨物船の外国港湾への入域を禁止することとした。

 北朝鮮にとって最も重要なライフラインである中国からの石油輸入は認められているので、制裁は未だ限定的なものである。中国とロシアが抜け穴に固執したため、国境を越えて密輸が続いている。船舶のブラックリストも不完全である。

 しかし、制裁は、平壌が石油などの必需品を輸入するために必要な外貨収入を削減する。2月に韓国が開城工業団地を閉鎖したことで、北朝鮮は年間約1億ドルの収入を失っている。特に重要なのは、中国が初めて制裁を履行しているように見えることである。北朝鮮の貿易の約90%は中国とのものであり、北京は平壌の核計画を抑制する為の鍵を握っている。北京は国連決議履行のための新たな規定を発布し、税関当局が積み荷の検査を行っている。

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ブラックリスト化

 何が変わったか。1つは、韓国の毅然たる外交姿勢がある。韓国は、中国の金体制支援を重大問題と見做し、米国の高高度ミサイル防衛システム配備を決定して中国に逆らっている。

 流れを変えた他の要因は、米国が中国のおそれる二次的制裁を課す動きを見せていることである。2月に可決された米国の法律では、制裁に違反した企業や政府機関はブラックリストに載り、米国の顧客や金融システムへのアクセスを遮断されることもあり得る。以前は北朝鮮の違法取引を大目に見てきた中国の国有銀行が、口座凍結を始めたのは、このためだろう。

 制裁によって金体制の行動を変えることができるか否かを判断するのは時期尚早である。制裁が北朝鮮に効き目を発揮し始めた最後の時期は2000年代中葉であったが、ジョージ・W・ブッシュ政権が二期目の外交的勝利を求めて手を緩めてしまった。そこで、北朝鮮は米国の賄賂は受け取ったが、核についての約束は守らなかった。しかし、今度こそは、体制変換を目指して締め付けを強化すべき時である。

出 典:Wall Street Journal ‘Hurting in Pyongyang’ (May 15, 2016)
http://www.wsj.com/articles/hurting-in-pyongyang-1463095192?mod=wsj_review_&_outlook


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