2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月16日

 ロシアの空爆の動機は、この社説にあるように、アレッポにおけるアサドの軍の劣勢を立て直すことにあったと思われます。この空爆のための発進基地として、ロシアはイラン西部のハマダンの空軍基地を使用しました。ここからツポレフ22長距離爆撃機とスホイ34戦闘爆撃機(機数は不明)を8月16、17の両日発進させたといいます。イランは第二次大戦後、外国の軍に国内の基地を使用させたことはなく、このためちょっとした憶測を呼ぶこととなりました。

 イランの当局者は、「ハマダンの基地がロシアの基地になったわけではない、ロシアの軍用機がそこに駐留しているわけでもない、従って、外国の基地を国内に設けることを禁じたイランの憲法に違反するものでなく、ロシアは単に給油の目的で基地を使ったに過ぎない」と述べている由です。恐らくそれが実態であり、本国から発進する場合に比べて飛行距離を大きく短縮出来ること、シリアのラタキアにあるロシアの基地ではツポレフ22のような大型機の運用に無理があることなどがその背景として指摘されています。

 今回の行動は、繰り返されることはあり得るとしても、一時的な性格のものと思われます。しかし、ロシアとイランの利害の共有関係が改めて明らかになりました。トルコのエルドアン大統領がプーチン大統領と先日会談しましたが、その際シリア問題も話し合われたといいます。ロシア、イラン両国とトルコのシリア問題についての立場は基本的に異なるので、3国共通の立場が容易に形成されるとは思われませんが、注意を要するでしょう。

 他方、米国は「敵対行為の停止」を何とか維持し、国連主導の政治プロセスを救うことが主要な関心事のようで、ケリー国務長官はしきりとロシアとの協力の可能性を探っています。オバマ政権にはシリア国内の勢力のバランスを変える必要があるといった発想はありません。社説の末段は、そういうオバマ政権に匙を投げ、次の政権に問題を先送りするしかないというウォールストリート・ジャーナル紙の苛立ちを表明したものでしょう。
 

  
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