田部康喜のTV読本

2016年10月19日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「この美しい塔は、砂の塔よりももろい」

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 TBS「砂の塔~知りすぎた隣人」(金曜夜10時)は、東京湾岸のタワーマンションが舞台である。第1回(10月14日)のラストの語りは、物語の行き着く先を暗示している。

 東京・銀座から晴海通りを抜けると、林立する「タワマン」の光景が浮かび上がる。筆者もかつて賃貸マンションを探して訪れたことがある。いまでも忘れないのは、千人規模の住人がいるのに廊下を歩いても、静まり返っていたことである。

 「タワマン」はサラリーパーソンの憧れであり、そのステイタスである。そして、住民たちはさまざまな職業や階層が混在して、社会の縮図である。静寂に包まれたその塔は海上に浮かぶ蜃気楼のようでもある。

連続誘拐、被害者の母親の共通点

 高野亜紀(菅野美穂)は夫の健一(田中直樹)とともに念願のマイホームに、タワーマンションの中古物件を手に入れる。50階建ての25階である。相場よりも1500万円も安かったことをふたりは喜ぶ。住人によって、ふたりの部屋は自殺した人の物件であることを知る。

 そして、25階という階数が、微妙な感覚を住民たちに醸し出している。この階以上の「高層階」行きのエレベーターが、エントランスから「右」であり、24階以下は「左」の「低層階」行きのエレベーターに乗る。

 物語は、「タワマン」の住民たちに翻弄(ほんろう)される亜紀と、「ハーメルン事件」と呼ばれる幼児の連続誘拐事件が絡み合う。

 ふたつの事件が二重螺旋(らせん)のように絡み合いながら、結末の解決に向かうのは常道である。DNAの構造と同じで、人間の存在の不可思議さを表現するのに適しているのではないか、と筆者は考えている。

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