Wedge REPORT

2016年11月30日

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山本一郎 (やまもと・いちろう)

Aetasエグゼクティブ・プロデューサー

1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員。知的財産権管理やコンテンツの企画・制作に携わる。

 何より取り組むべきが、海外で膨大に作られる日本のコンテンツに対する壮大なパクリ問題、海賊版問題である。これこそが、クールジャパンとして日本の知的財産を世界に売っていくためにまず守られなければならない代物のはずだ。

 経済産業省には「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」が設けられているが、中国では日本のゲームコンテンツのデッドコピーが大量にサービスされている。また、日本のコンテンツ事業者が中国でビジネスを行おうと思っても認可が下りず、下手をすると日中合弁企業という体裁にやられてコンテンツやそれを支える技術そのものが流出してしまうといった事態に事欠かない。

 加えて、海賊版対策を行う「偽造品の取引の防止に関する協定」(ACTA)の取り扱いは外務省になっている。しかし、12年に欧州(EU)議会がこのACTAの条約批准を否決し、事実上頓挫してしまって以降、多国間外交での合意で海賊版対策を行う道は、しばらくの間、閉ざされた。アメリカのように、個別企業が政府を後押しして世界貿易機関(WTO)に提訴させるなどしてプレッシャーをかけつつ現地政府の対策を促すしかなくなっている。日本企業も個別に不利な裁判を起こし、中国司法の下で善意に期待するしかない、という状態だ。これで本当にクールジャパンと言えるだろうか。

 とはいえ、クールジャパンの掲げる旗は日本の国家戦略に見合うことは間違いない。日本はほかの国とは全く異なる、営々と続く日本文化をバックボーンにしている。これを守り、世界に知らしめて日本のプレステージを引き上げていく戦略が間違いであるはずがない。ただし、方法論は修正が必要だ。日本文化を守り、制作者や「これを作りたい」と願う若者に寄り添う政策にすることが求められている。

現在発売中のWedge12月号では、以下の特集を組んでいます。

■特集「クールジャパンの不都合な真実」
 【PART1】設立から5年経過も成果なし 官製映画会社の"惨状"
 【PART2】チグハグな投資戦略 業界が求める支援の"最適化"
 【PART3】これでいいのかクールジャパン 不可解な投資、疲弊する現場
 【PART4】「クールジャパン」×「地方創生」 危険なマジックワードの掛け算
 【PART5】覚悟のない産地への支援は「伝統工芸」を滅ぼす
 【PART6】「Superdry極度乾燥(しなさい)」が世界中で大ウケするワケ
 【PART7】最優先の国家プロジェクトはクリエイターの救済と海賊版対策
 【Column】すしの築地、アニメの秋葉原 「聖地」で学びたい外国人が殺到
 【Interview】リオ五輪閉会式演出の立役者 MIKIKO

 

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