世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月13日

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 トランプ陣営の政策アドバイザーを務めたジェームズ・ウールジー元CIA長官が、11月10日付のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙に、現状維持に挑戦しない限り、中国の体制と台頭を受け入れることになるという論説を書いています。要旨は次の通りです。

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 米国は依然として世界最強の軍事力を持つ。敵を抑止し、戦争の帰趨を決し、平和を回復するためにその力を投射する能力を有する。今日、米国民の一部は「世界の警察官疲れ」といえるものを示しているが、安全保障に対する米国のコミットメントに対する同盟国の信頼を強化し、通常兵器とデジタルの戦域における米国の優位性の復権のために、オバマ政権によって立法化された有害な国防予算の強制削減措置を撤廃する必要がある。また、レッドラインを引き直し、米国の枢要な利益を定義し直すことをせねばならない。

 歴史を見れば、米国の介入は自己利益のためではなく、典型的には非人間的抑圧、国際法の露骨な違反、人道的危機に直面して行われて来たことが判る。我々はどこで、どう関わるかについてもっと慎重であるかも知れないが、我々が孤立主義者となることはない。

 米国は、アジアにおけるバランス・オブ・パワーの担い手であることを認識している。中国の勢力伸長から同盟国を守る決意であり続けるであろう。抑制されない拡張主義と侵略は更なる悪行を招く。この間違いは繰り返さない。中国は我々の行動は領土的野心によるものではないことを認識すべきである。

 我々は中国の増大する足跡に見合った改革が世界的な機構においてなされることを中国が欲していることを理解している。時間はかかるが、変革は不可避である。人民元がSDRのバスケット通貨の1つとされたことはその例である。オバマ政権のアジアインフラ投資銀行に対する反対は戦略的誤りであったと今日ワシントンでは広く認められている。「一帯一路」イニシアティブに対する次期政権の対応はもっと暖かなものであることを希望する。

 両国の間のイデオロギーの違いについてももっと巧く管理されるべきである。自由を広げることに対する米国のコミットメントに揺るぎはない。しかし、中国の社会・政治のシステムに挑戦することは危険な努力であることは益々明らかである。我々はそのシステムを好みはしないが、それをどうかせねばならないというわけでは必ずしもない。従って、アジアの現状維持に挑戦しないという中国のコミットメントと引き換えに、米国は中国の政治的・社会的構造を受け入れ、如何なる方法であれ邪魔立てはしないという大きな取り引きが成立するように思う。それは明示的な合意ではないが、この先何年もの間両国関係の指針となる暗黙の了解である。

出 典:James Woolsey‘Under Donald Trump, the US will accept China’s rise – as long as it doesn’t challenge the status quo’(South China Morning Post, November 10, 2016)
http://www.scmp.com/comment/insight-opinion/article/2044746/under-donald-trump-us-will-accept-chinas-rise-long-it-doesnt

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