2024年4月27日(土)

マネーの知識

2017年1月2日

人民元と中国事情

 米国の利上げによる米ドル高トレンドは欧州(含む英国)・日本・そして中国等の輸出経済を後押しするが、中国の不安定な金融システムにとっては大きなリスクになりかねない。ひいては間接的に世界の金融市場を通じて世界景気に多大な影響が避けられない。

 今年の3月5日から北京で開催される全国人民代表大会では施政方針や予算等が討議・採択されるが、秋に北京で開催予定の中国共産党第19回全国代表大会までは予断を許さない状況が続く。

 中国当局は外為市場における人民元の安定化に向けて様々な施策を打ってきているが、ここ1年程で外貨準備高は激減し、2016年11月末段階で約3兆515億ドル(前年比11%減:2014年のピーク時は約4兆ドル)だ。財政悪化はひどく、負債の対GDP比は280%強ともいわれている。目先や当面は負債を証券化(debt to equity swap)する手段もあるが、本質的な対処にはならない。

 権力の集中に関心の高い習近平主席は第19回大会を前に景気の弱含みを見せたくない一方、不良債権の償却と金融機関の資本強化、またはシャドーバンキングセクターの牽制に力を入れる可能性が高い。これを実現するには海外からの直接投資を促す必要があり、選択肢は限られている。

 人民元がおかれている状況と中国事情は米国、欧州、日本にとっては対中政策で一つの節目ともなるべく分岐点だ。トランプ氏が対中貿易と対中投資にどう取り組むか、安倍政権がこのチャンスをどう活用するか、しっかりと見届ける必要がある。

  
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