海野素央のアイ・ラブ・USA

2017年1月20日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

変化に対する期待値

トランプインターナショナルホテル前で筆者

 トランプインターナショナルホテルで筆者が遭遇した白人の退役軍人を紹介しましょう。ジムと名乗るこの退役軍人はトランプ支持者の合言葉となった「米国を再び偉大な国に取り戻す」と印刷された赤い帽子を被り迷彩服を着ていました。中西部オハイオ州クリーブランド出身のジムさんは同州の製造業数が減少した点を懸念していました。そのうえで次のように語ったのです。

 「今回の選挙でトランプに投票しました。トランプは変化をもたらします。ワシントンにいる政治家は何も変えることができません」

 2008年米大統領選挙で変化を掲げて米国史上初のアフリカ系の大統領となったオバマ氏に対する国民の期待値はかなり高かったです。当時と比較すれば、トランプ次期大統領に対する国民全体の期待値はそれほどではないものの、ジムさんのような白人の退役軍人ないし労働者階級のそれは極めて高いとみてよいでしょう。

 10年中間選挙において南部バージニア州で戸別訪問を行うと、就任後わずか2年弱でオバマ氏に対する期待は怒りと失望になっていました。同氏は長期的にみれば国内外の課題に取り組み多くの変化を起こしましたが、短期的に結果を出すことができませんでした。一般に、米国人のメンタリティは短期的で結果志向です。 

 トランプ次期大統領は、選挙後オハイオ州、ウィスコンシン州及びミシガン州を含めた9つの州で応援をしてくれた支持者を対象に「感謝集会」を開催しました。そこでトランプ氏は労働者階級に対して「自由貿易ではなく公平な貿易により労働者を守る」と主張し、退役軍人とその家族には必ず感謝の言葉を述べています。感謝集会の意図は、白人の労働者と退役軍人を核とした「トランプ軍団」に対して経済上の愛国心に訴えるメッセージを送り続け、彼らのモチベーションを維持して中間選挙に突入することです。オバマ大統領と同じ轍の道を踏まないためには、トランプ次期大統領は短期間で彼らの賃金を上げ収入を増やし、生活レベルが向上したという実感を持たせることが必須です。それが彼らに対する変化になるからです。

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