世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月27日

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 英国の最高裁判所は1月24日、EU離脱のためにEU条約50条を発動するには議会の事前承認を必要とするとの判決を言い渡しました。フィナンシャル・タイムズ紙は、1月25日付の社説でこれを歓迎しつつ、離脱プロセスにおける議会の役割を論じています。要旨、次の通り。

(iStock)

 議会が国の将来を議論する中心という本来あるべき場所に立ち戻った。最高裁は最も重要な憲法に係る判決において政府が条約50条を発動するには議会上下両院の事前の承認が必要と判示した。簡単にいえば、メイ首相は議会の同意を得ることなくBrexit の引き金を引く権限を有しないということである。

 国民投票の結果は尊重されねばならない。もし、議会が離脱プロセスを邪魔する――例えばメイが離脱通告の期限とした3月を遅らせる――ことをすれば、それは英国の政治制度に対する信頼を損ねる。従って、議会は政府に行動の自由を与えることと有権者の意思を邪魔することのバランスを見出さねばならない。

 デービス離脱相は「数日中に」必要な法案が提案されること、それは「最も直截な法案」になることを表明した。下院は既に昨年12月の投票で圧倒的多数でBrexitに支持を表明しているが、離脱交渉の細部に干渉するために、法案に修正を施すことを狙う議員もいる。それは間違いである。政府は法律に縛られて交渉は出来ない。

 同時に、英国は議会民主制であるので、議会は政府の提案を自動的に承認する以上のことをやらねばならない。Brexitの方針について政府の白書を得て、これを議論するという方法がある。交渉結果について議会が投票を要求することも出来ようが、この場合には「崖っぷち」の離脱に直面して議会が承認を余儀なくされるという危険がある。

 条約50条の発動に関して訴訟を提起したのは残留派の人物であるが、訴訟の意図がBrexit を止めさせることにあったとすれば失望を免れまい。しかし、より公正で法的に健全な離脱の道を導いた。これは英国の司法制度と最高裁の勝利である。

 一方、最高裁は条約50条の発動に際し、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの議会の承認は要しないとの判断を示した。このことはウェストミンスターの議会の立場を強化したが、他方で、スコットランドと北アイルランドでは残留派が多数という状況にあって国の将来の問題を浮き彫りにした。

 議会の主権が再活性化されるよう、そして英国の将来に関する決定が有権者の身近でなされるよう、多くの人々がEU離脱に向けて誠実にキャンペーンを行った。最高裁の判決が行ったこともこれである。Brexitもそうでなければならない。

出典:‘The UK Supreme Court rules for democracy’(Financial Times, January 25, 2017)
https://www.ft.com/content/6ac9b89a-e23a-11e6-9645-c9357a75844a

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