World Energy Watch

2017年9月13日

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時間の価値とキャッシュフロー

 1億円を投資し、10年間毎年2000万円の利益がある投資と、5年間毎年4000万円の利益がある投資ではどちらが良い投資だろうか。ともに2億円の総利益があるが、時間の価値を考えると、5年間で利益があがる投資が良い。早い段階で利益が得られれば再投資を行うことにより資金を増やすことが可能だ。明日の100万円より今日の100万円に価値がある。

 投資の収益率を計算する際には、時間の概念を数字で表すために、将来の利益額を減額することで利益額の現在の価値を計算する。例えば、1年間で10%の収益率が必要と考えると、1年後の100万円を1.1(1+10%)で割り、約90万円の価値とする。2年後であれば1.1の2乗、1.21で割ることで数字を得る。この計算に利用する数字(ここでは10%)を割引率と呼ぶ。収益性を考えるには時間の概念が必要ということだ。時間の概念を考慮した投資の収益率をIRR(内部収益率)と呼んでいる。IRRを計算するには投資額と利益額(正確には次に述べるようにキャッシュフローだが)が同じになる割引率を求めればよい。エクセルの関数ソフトを使えれば簡単に得られる。

 もう一つ大切なことは、利益だけでなく、減価償却費を加えた手元に残る資金、キャッシュフローで収益率を考えることだ。例えば、自動車会社であれば工場設備に投資を行い、さらに材料となる鉄板、部品購入という投資により車を製造している。スーパーマーケットであれば、店舗への投資と販売用商品への投資を行っている。設備、店舗などは固定資産と呼ばれ、材料、商品は流動資産と呼ばれる。区別は通常1年以内に現金化可能かどうかだ。1年以内に現金化可能な資産は流動資産だ。購入された固定資産のコストは何年間かにわたり減価償却費の形で回収される。減価償却費はコストだが、投資の結果手元に残る資金(キャッシュフロー)だ。

投資のリスクー膨らむ工費

 投資にはリスクがつきものだ。例えば、予定していた価格で売れない。投資額が予定より膨らんでしまった。競合商品が出てきたために市場が縮小したなど多くのリスクがある。いま、原発への投資で問題とされているのは、投資額が当初予定より膨らんでしまうことだ。

 この理由の一つは、多くの先進国で原発の建設が中断していたことがある。米国のように30年間工事がなければ、エンジニアも現場の労働者もノウハウを失う。いま世界で原発工事を継続的に行っているのは中国だけだ。米国ジョージア州のボーグル原発の建設工事には中国核電技術(SNPTC)のエンジニアが参加していたほど、先進国ではノウハウの蓄積が中断している。さらに、米国ではWHの新型炉、フィンランド、フランス、英国ではアレバの新型炉が建設されていることも工期の遅れ、工費の増大を招いている。

 米国サウス・カロライナ州VCサマー原発は、建設中止が一旦発表されたが、その理由の一つは、工費の増大だった(建設中止の詳細については国際環境経済研究所の「エネルギーの常識を疑う」に掲載します)。2013年の着工時の投資予想額は92億ドル(約1兆円)だったが、現在完成には180億ドルが必要とみられている。当初のほぼ2倍だ。

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