世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月28日

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 マクロンの支持率下落の原因は、上記の記事が指摘している通りでしょう。もともとマクロンの支持層は24%程度でしかなかったわけで、マクロンの政治スタンスはリベラルな中道ですから、より厳しい移民政策を求める右派や労働法制の自由化に反対する左派から批判されるのは当然でもあり、幾つかの出来事も重なって、急激な支持率低下の現象にもなったのでしょう。

 しかし、その背景には、マクロンの目指す「威厳ある偉大な大統領」像(「ジュピター的な大統領」がマクロンの持論)や自分のスケジュールは自分が決める(プレスや他者に影響されない)ことに拘る姿勢により、国民の持っている大統領像との間にギャップが存在したことが大きいです。これらはマクロンの信念に由来するものなので、国民やメディアの側がマクロンのスタイルに慣れるしかないかもしれません。

 いずれにしても、2002年の制度改正で、国民議会の任期と大統領の任期は、ほぼ同時期の5年となっているので、支持率が落ちようと、議会でマクロン派の議員がヘマをやろうと、政局に直ちに影響は出ないようです。上院は、まだ既存の勢力配分ですが、最終的には国民議会が優越します。改革の成果が出てくれば、国民の理解も進むかもしれません。

 とりあえず懸念されるのは、労働法改正に反対する労働組合や失業中の若者たちが街頭で反対運動を起こし、暴徒化することです。これも、2005年の移民の若者によるパリ郊外暴動事件、2006年及び2016年の労働法の改正に反対の抗議行動が暴動に発展した事態の前例があります。もし、そのような状況でイスラム過激派のテロが再発すれば、状況は更に混乱し、マクロンの統治能力が問われることになります。

 労働保護の緩和を初めとして、種々の改革を実現しないとフランスの将来はありません。9月以降、種々の抗議行動が予定され、経験不足や補佐するベテラン政治家がいないことは心細いマクロン政権ですが、多少の国内危機を乗り越えて改革を進めなければ、マクロンの理想とするフランスの大統領とはいえないでしょう。

  
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