世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月8日

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 米ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上席研究員とスザンヌ・マロニー外交政策プログラム次長が、ISがシリア、イラクで消滅したのも同然の今、米国は中東でのより広範な安全保障戦略を真剣に討議すべきである、として「中東版マーシャルプラン」の構想を提案する論説を連名で11月7日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/bbourdages/Hemera/Yevgen Royik/zhemchuzhina)

 中東で目立つのは、米国と同盟国に、地域の内戦を終結させ、国内の紛争に苦しんでいる国々を強化する戦略が欠けていることである。と同時に、地域の政治、経済改革を進めるしっかりした計画が無い。問題国はイラク、シリア、エジプト、イエメンとヨルダンである。

 米国と同盟国は以下をなすべきである。

・イラクに対し、米軍の長期的なプレゼンスと、包括的支援を約束する。

 イラクを復興し、内戦の再来を防ぐため、アフガンやエジプトに対するのに匹敵する経済支援が必要である。近い将来、イラクはシーア派の民兵組織の解体とイラク治安部隊への一部編入のため、多くの支援を必要とする。

 同様にイラクのクルド自治区でのイランの影響を制限することが、クルド人とイラクの他の国民との協力を回復するうえで望ましい。

・シリアについてはキーワードは地域主義である。

 米国はアサドとは協力できないので、アサドの支配の及ばない地域を確保し、再建する必要がある。一部の地域は暫定的な自治地区として扱うべきである。

イエメンの内戦は人道上の大惨事である。

 危機はイラン、アルカイダ、そしておそらくはISに戦略的な機会を与えている。米国とサウジは他国と協力して、永続的平和を確立するよう努力すべきである。合言葉は妥協である。

 軍事的勝利は考えられない。

・地域の他の国については、米国は政治、経済改革を働きかけるべきである。

 エジプトのシシ大統領は米国の理想的な同盟者ではないが、無秩序や過激主義よりはましである。エジプトが長期的に進歩するためには、法の順守と政治の多元主義が必要である。米国はシシが基本的人権を守る制度を確立するまで援助を切るべきである。米国が圧力を加えれば、エジプトが独裁政治に陥るのを防ぐ一助となるだろう。

・人口800万で140万人ものシリア難民を受け入れたヨルダンは、新しいマーシャル計画の中心となるべきである。シリアの内戦が終結すれば、中東の開発のための歴史的な投資の機会が生まれる。米国は欧州や湾岸の同盟国とともに、地域の若者に職を与え、イスラム過激派の魅力を減らす再建計画を主導すべきである。

 米国が真剣に中東戦略を実施しようとすれば、おそらく年数十億ドルの資金を要するだろう。それとシリアを中心にCIAと軍事的関与を適度に増加させる必要がある。しかし米軍が再び長期的な戦いに巻き込まれることはない。

出典:Michael O’Hanlon & Suzanne Maloney,‘A Strategy for the Post-ISIS Middle East’(Wall Street Journal, November 7, 2017)
https://www.wsj.com/articles/a-strategy-for-the-post-isis-middle-east-1510093860

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