定年バックパッカー海外放浪記

2018年4月15日

»著者プロフィール
閉じる

高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

夜空に奏でるフュージョンミュージック

 安宿の屋上のペントハウスは3つ部屋がある。どの部屋もベッドとテーブルが置いてあるだけの簡素なつくりである。左端にオジサン、真ん中の部屋には若いラテン系カップル、右端にはイタリアの中年が投宿している。

ガンガ(ガンジス河)のガート(沐浴場)。バラナシにはこのようなガートが20カ所以上設けられている

 彼らと挨拶を交わすうちに親しくなった。ラテン系カップルは毎日夕方からインド伝統音楽を練習している。彼らは午前中インド音楽の教室に通ってバラナシ地方の伝統音楽を学んでいる。
ある日の夕刻、彼らの音楽を聴きながらインド国産ウィスキーRoyal Stag Reserve 1000ml(530ルピー≒950円)をチビチビやって夕焼け空を眺めていた。ガンジス河の水面が赤く光り幻想的世界だ。

夕闇迫るガンジス河での荼毘。煙が天国に昇っていく

 音楽の合間に英語とスペイン語のチャンポンでおしゃべりした。彼らはチリのプロのミュージシャンだ。彼氏はパーカッショニスト、彼女はシンガーでフルートとか色々な楽器もこなす。彼らはチリの首都サンチアゴ・デ・チリの西方の太平洋に面した都市バルパライソの出身。バルパライソの赤ワインは最高とお国自慢。

 チリは南北に細長い国土であり、地域により音楽のリズムが異なるという。北はアンデス・リズム、南はゆったりとしたリズム、中央はハードリズムという特性があるそうだ。

芸術一家のボヘミアンなライフ・スタイル

夕暮れ時には無数の遊覧ボートがガンジス河に浮かぶ

 夕焼けが星空に変わるころパーカッショニストの彼の妹も屋上のテラスにやってきた。彼女は階下の部屋に投宿しており、ラテン的ノリの可愛い系女子である。一緒にウィスキーをやりだすと話が弾む。

 彼女はイラストレーターで、チリでは商業ポスターを作製して生活費を稼いでいる。父親も画家で父親がインドで絵を描いていたので子供の頃一家はインドで数年間暮らした経験があるという。

 そんな芸術一家の血筋なのか旅をしながら絵を描くのが大好きという。それがイラストレーターとして仕事をする上でのインスピレーションを豊かにしているよし。

 パーカッショニストの彼によると、世界各国を旅してその土地の音楽と出会い新たなインスピレーションをもらい、地元のミュージシャンとセッションしてフュージョンミュージックを創造する。こうした即興演奏(improvisation)が自分に取り人生の最高の瞬間だと一生懸命に説明してくれた。

ヒンズーの神々に祈りの舞踊を捧げる舞姫

 オジサンが羨ましいと言うと、「これはミュージシャンに与えられた特権(privilege)だと思うよ」と彼は嬉しそうに答えた。星空の下で音楽とウィスキーという贅沢な時間がゆっくりと流れていった。

⇒第4回に続く

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る