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2018年5月15日

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堀成美 (ほり・なるみ)

国立国際医療研究センター 感染症対策専門職

神奈川県生まれ。神奈川大学法学部、東京女子医科大学看護短期大学卒業。感染症科外来勤務の後、国立感染症研究所FETP、聖路加国際大学看護学部を経て、2013年より現職。感染症の流行の早期対応、予防啓発に取り組む。

 では、諸外国ではどのような対応をとっているのか。例えば、オーストラリアでは留学ビザ希望者に対して、政府が指定した医療機関での健康診断を義務付けている。検査結果は、クラウド上に置かれ、オーストラリアの担当医師もチェックするという体制になっている。そのうえで、留学生には「留学生保険」への加入が義務付けられている。この保険は急な体調不良等の医療はカバーするが、美容の治療や出産、そして出国前から把握されている高額な医療費のかかる慢性疾患(がんやHIV感染症)等については適用されない。慢性の病気を患った人であっても留学は可能であるが、治療薬は母国から持参する仕組みになっている。

 このような話をすると、「だから外国人を受け入れるべきではない」と主張する人が必ず出てくるが、それは本質的な解決策ではない。人口減少が続くなかで、今まで以上に外国人と共生していくことは不可欠だ。問題なのは、オーストラリアの事例を見れば分かるように、事前の健診、留学生専用の医療保険など、手当てできる対策をとっていないことだ。

 16年から東京、神奈川などで、家事代行サービスの受け入れが特区として認められることになった。開始前に、私は受け入れ業者にそれぞれ電話をかけて「健診とワクチン接種の証明をするように」とお願いした。訓練され、就労意欲のある労働者が感染源となって、赤ちゃんや子どもが病気になれば、外国人バッシングにつながるリスクがあると考えたからだ。きちんと事前にチェックしさえすれば、このような問題が起こらずに済む。

簡単に扶養に入れる
協会けんぽ

 もう一つ、外国人の皆保険制度加入に関する問題があることを指摘しておきたい。日本の国民皆保険は、前出の自営業者などが加入する「国保」のほか、主に中小企業に勤める人が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、主に大企業に勤める人が加入する「組合健保」がある。企業が自主運営する組合健保は、扶養者を加入させる場合、扶養者が同居していることや、扶養している証明(一定額の送金履歴)などの提出が求められるなど、厳しいチェックが入る。

 一方で、都道府県が運営主体である国保や協会けんぽは、加入や扶養の認定の加入ハードルが低いというのが、現場での実感だ。というのも、旅行中に病気となった外国人旅行者が、体調不良で受診し、急遽入院したために高額な医療費が請求された際に、「日本で働いている子どもの扶養に入れてもらう」ということになった。驚いたことに、保険証はすぐに発行された。

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