今月の旅指南

2011年5月27日

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狩野直美 (かのう・なおみ)

東京生まれ。フリーライター。旅行業界誌の記者・編集者を経て、1994年からフリーランスに。主に海外旅行関連誌、ウェブマガジン等に記事を執筆中。

 山口県屈指の景勝地「錦帯橋〔きんたいきょう〕」。春の桜、秋の紅葉など、五連のアーチからなる木造橋が周囲の自然と溶け合った四季折々の風景はまさに絶景の名にふさわしい。

 この地に夏の訪れを告げるのが、毎年6月1日の鮎漁の解禁とともに、橋の架かる錦川で行われる錦帯橋の鵜飼だ。初日には豊漁と安全祈願の「鵜飼開き」が催され、8月末まで続く季節の幕が開く。期間中は鵜飼の様子を近くで見物するために、屋形船が運航される。

鵜飼舟の篝火が錦帯橋を幻想的に演出


  「錦帯橋の鵜飼の見どころは昔ながらの漁法が見られる点と、錦帯橋の“静”、鵜飼の“動”の共演です」と錦帯橋鵜飼の社長、西本克也さん。

 鵜を使って魚を捕る伝統的な漁法の歴史は古いが、この地の鵜飼について最初に記述があるのは1638(寛永15)年で、それは錦帯橋を架橋した第3代岩国藩主、吉川広嘉〔きつかわひろよし〕公の青年時代のことだという。錦帯橋の鵜飼はそのころの姿を再現しており、鵜を操る鵜匠の服装は頭に風折烏帽子〔かぜおれえぼし〕、腰には蓑〔みの〕を着け、舟は平底の木造船、赤松の篝火〔かがりび〕に、屋形船の提灯〔ちょうちん〕には蝋燭〔ろうそく〕が使われる。広嘉公も目にしたであろう、400年近く前の鵜飼の風情をそのままに楽しむことができるのだ。

 川面に映る篝火と、灯火に照らし出された錦帯橋も絵になるが、小雨降る日に川霧が立ち込め、その向こうに橋が浮かび上がって見える風景もまた一段と幻想的なのだとか。

 鵜飼といえば、通常は夜行われるものだが、錦帯橋の鵜飼では土日と祝祭日に限り、昼鵜飼も実施する。昼鵜飼では水の中を泳ぐ鵜の姿や鵜匠の手縄〔たなわ〕さばきがよく見えて、夜の鵜飼とはまた違った雰囲気が味わえる。

夜とは違う雰囲気が味わえる昼鵜飼

 「鵜と人間との関わりの歴史は古く、『古事記』にもその記述があります。古代の人々は鵜には不思議な力が宿っているとし、人間界と別の世界をつなぐ役割を果たしているとも考えていたようです」

 時代をさかのぼったような伝統的な漁法を眺めながら、いにしえに思いを馳せる。そんな風流もまた一興だ。

 

錦帯橋の鵜飼
〈開催日〉2011年6月1日~8月31日
〈会場〉山口県岩国市・錦帯橋(山陽新幹線新岩国駅よりバス)
〈問〉錦帯橋鵜飼 0827(28)2877
http://www.iwakuni-kanko.com/

◆ 「ひととき」2011年6月号より

 

 

 

 

  

 
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