2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月19日

 ドイツのぺルテス所長が、独仏英の3国間の防衛協力の重要性を強調する気持ちは、よく理解できる。ドイツは、2016年に約10年ぶりに国防白書を刊行した。が、今後の国防方針や安全保障政策に関するドイツの方向性が定まったわけではなく、対IS、対テロ政策が主眼であった。また、現在、トランプ大統領とドイツのメルケル首相は、あまり馬が合わない。例えば、8月10日付の当サイトでも紹介した米EU首脳会談で(『米EU、対中露戦略という「共通利益」』参照)、EUはロシアへのエネルギー依存度を減らそうと、米国から液化天然ガス(LNG)を輸入することを決めているが、逆にメルケル首相は、8月18日のプーチン大統領との首脳会談で、ロシアとドイツを結ぶ新たなガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」に合意し、ロシアへの依存度を深める選択をしてしまう。(9月10日付け本欄『ノルド・ストリーム2は欧州のロシア依存を高めてしまうのか』)

 このように、ドイツがEUの戦略をもはやまとめられない状況下では、ドイツはフランスと英国を味方にして、どうにかEU内の指導力を保ちたいと思うのかもしれない。

 また経済的にも、現在、ドイツ銀行問題等、今までEU経済を牽引してきたドイツ経済の勢いはない。そこで、EU内では3大国の1つである英国がBrexitを果たしてしまったら、EU経済はどうなるのか、というのもドイツの本音かもしれない。そのような形で、どうにか英国をEUに繋ぎとめておきたい気持ちの表れかもしれないし、その手段の1つが、共通の外交・安全保障政策なのだろう。

  
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