前向きに読み解く経済の裏側

2018年12月3日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

銀行の自己資本比率規制も、過去には官製カルテルとしての側面あり

 実は、銀行の自己資本比率規制も、銀行にとってはカルテル効果があったのではないかと筆者は考えています。これは複雑な規制ですが、大胆に一言で言えば「銀行は自己資本の12.5倍までしか融資をしてはならない」という規制です。

 バブル崩壊後、銀行は赤字決算によって自己資本を減らしてしまいましたから、貸して良い金額が減ってしまいました。銀行は自己資本比率規制によって貸出の抑制を余儀なくされたのです。

 そうした時に従来通りの多数の借入申込があっても、無い袖は振れないわけですから、銀行は顧客を選ぶことになります。その結果として「高い金利を払ってくれる客にだけ貸す」といったことが行われていたようです。

 もっとも、コンビニのレジ袋や自動車の輸出自主規制と大きく異なっていた点が二つあり、銀行にとっては決して嬉しかったわけではありませんでした。以下は、元銀行員である筆者の愚痴です。

 異なっていた点の第一は、「貸し渋り」という批判を多方面から強く受けたため、銀行員は大変肩身の狭い思いをした、ということです。借り手の中小企業や一般の人々は自己資本比率規制という物を知らないので、「銀行に意地悪された」と思われたのですね。

 今ひとつは、銀行の貸し渋りによって景気が悪化し、貸し倒れが増えてしまったことです。銀行の貸出金利が多少上がって儲かったとしても、貸出金が大量に焦げ付いて返済されなくなってしまえば、銀行にとっては差し引き大損ですから。

 ちなみに、自己資本比率規制がカルテル効果を持ったのは、ほんの一時期でした。その後は、「自己資本比率規制によって銀行が貸しても良い金額」をはるかに下回る金額の借入申込しか来ないので、カルテルとしてのメリットが全くないのです。

 まあ、現役銀行員は自己資本比率規制にカルテル効果があったなどとは思ってもいないでしょうし、当時の銀行員でさえも、それに気づいていた人は少ないのかもしれませんが。

  
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