2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年12月13日

 今後の中台関係については、まず、「中国は一つ」との政策を取る国民党が、次期総統選をめぐって中国との良好な関係を見せつつ、民進党を攻撃するであろう。習近平政権としては、今後とも、蔡政権を相手にせず、台湾の地方の国民党関係者等を取り込んでいく、との手法をとる構えのようである。高雄市長に当選した韓国兪は、当選後、中国との交流を進めるための機関を市役所に新設すると表明した。習近平の発言である「両岸一家親(中台は一つの家族のように親しい)」を引用し、これを強力に推し進めると述べている。台湾にとり危険な兆候である。

 選挙と同時に、数多くの国民投票も実施された。この中には、福島県等5県からの日本産食品の輸入を解禁することの是非を問うものも含まれていたが、投票の結果、5県からの日本食品は引き続き輸入禁止となってしまった。中国が日本食品の輸入について緩和の方向に向かいつつある状況の中で、この問題は日台間での解決困難な問題として残ることとなる。12月2日、河野外相は、WTOに台湾を提訴する可能性について言及した。日台間に対立が生じている状況は、中国を利するものである。国民投票の結果については、「台湾の国民党に利用された」という見方が強いが、その国民党の背後には中国共産党によるプロパガンダ工作も響いているかもしれない。

 今回の選挙について、西側や台湾の民進党寄りのメディアの論調は、「民主主義が機能した」という冷静な論評が多く見られる。確かにそれはそうであるが、選挙と国民投票の結果は、プロパガンダやフェイクニュースに対する民主主義の脆弱性、少なくともその可能性も改めて示された。中国による台湾への干渉を、一段と注視していく必要がある。

  
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