海野素央の Love Trumps Hate

2019年6月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

G20大阪サミットとトランプのパターン

「神・銃・トランプ」のTシャツを着た支持者(筆者撮影@ペンシルべニア州モントゥアズビレ)

 トランプ大統領が演説をする直前に、長男のドナルト・トランプ・ジュニア氏がスピーチをしました。ジュニア氏は、集まった支持者に向かって、

 「中国は雇用を潰して、あなたの夢を奪った」
 「中国は民主党候補が大統領選挙で勝つことを望んでいる」
 「バイデンは中国は脅威ではないと言った」

 と、語気を強めて語りました。トランプ大統領も「米国は中国との貿易で年間5000億ドルもの損失を被っている」と述べたうえで、中国を「盗人」扱いしました。

中国が米国人労働者の夢を潰したと訴えるドナルド・トランプ・ジュニア氏(筆者撮影@ペンシルべニア州モントゥアズビレ)

 親子が一体となって中国を攻撃しました。中国とメキシコは支持基盤を固めるのに好材料であることは確かです。

 さて、予測不可能と言われているトランプ大統領ですが、同大統領にはあるパターンが存在します。以前説明しましたが、まず自ら危機的状況を創ります。次にエスカレートさせ、世界を不安に陥れます。状況が悪化すると、タイミングを見計らって「トップ外交」を行い、状況を改善します。そのうえで、最終的に自分が危機的状況を救ったという演出をし、「勝利宣言」を行います。

 中国とメキシコに対する追加関税及び制裁関税の問題も、このパターンで進んでいくとみて間違いないでしょう。となると、今月28、29両日に開催されるG20大阪サミットで、仮に両国との首脳会談が実現すれば、トランプ大統領はエスカレートした状況を一旦和らげることになります。逆に、物別れして世界を動揺させるかもしれません。あるいは、直前にサミット出席をキャンセルして交渉相手を牽制し、最終的に参加するという選択肢もあります。

 いずれにしても、米大統領選挙の投票日は来年11月3日です。G20大阪サミットで中国とメキシコとの貿易問題を解決し、トランプ大統領が両国に対して勝利宣言を行うにはあまりにも早すぎます。

 トランプ大統領は中国とメキシコに対して、状況を悪化させ、緊張を緩和するというパターンを繰り返し、投票日までうえで紹介したジャネットさんのような反中国・反メキシコの熱狂的な支持者を引きずっていくでしょう。

 結局、中国とメキシコに対する関税は支持者をつなぎ留めるための「政治的道具」に過ぎないのです。日本も完全にトランプ大統領の再選戦略に巻き込まれています。

  
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