WEDGE REPORT

2019年6月10日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

前回とは日本の国力が違う

 安倍首相のイラン訪問に話を戻す。

 34年前の中曽根工作と比較してみると、異なるのは、今回は、安倍首相とトランプ大統領のきわめて良好な関係を知ったうえでイランの側から仲介を要請してきたことだ。前回のように、第3者である日本の関与にイランが拒否反応を示すということはありえない。

 あるとすれば、むしろ米側だろう。トランプ大統領は首相のイラン訪問を要請、歓迎しているというが、本心はどうか。東京とテヘランの良好な関係に米国は過去、水を差す行動を取ったことが何度かあった。日本とイランが共同で開発したアザデガン油田に難色を示し、2010年に日本側が撤退に込まれたケースなどがそれを端的に示している。

 今回の首相のイラン訪問についても、日本側は最後まで、トランプ氏の同意を得られるか神経質になっていたという報道(5月28日付け読売新聞)があることも、こうした疑念を強めている。

 前回と異なるもう一つは、ピークを過ぎたとはいえ、日本の国力が1985(昭和60)年当時とは比べものにならないほど強くなったことだ。中曽根工作では、今回安倍首相がしたように関係国に〝仁義〟をきったかは明らかではないが、したところでほとんど相手にされなかったろう。今回、少なくともネタニヤフ首相との会談では、中東和平について協力していくことで一致している。

 安倍首相にとって、イラン訪問は、外交手腕への真の試金石だといっていい。成果をあげれば、トランプ大統領との間も、過剰な歓迎攻めなど必要としない真の信頼関係が実現するし、失敗に終われば、ピエロになるだけだろう。

 6月7日に発表された自民党の参院選公約は「力強い外交・防衛」を第1の柱と位置づけた。安倍仲介外交が日の目を見れば、公約に大きな裏付けを与える効果をももたらす。

 となれば、その成果を引っ提げて、首相は衆参同日選に打って出るか?

  
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