ヒットメーカーの舞台裏

2012年12月13日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 自然光や照明の下では、耳の中がほんのりと照らされる。光源はLED(発光ダイオード)などではなく全て外部の光だ。光ファイバーのように本体の内部に光を通し、先端部で拡散させながら放出している。母子の耳かきシーンを想定し、安全性に留意した子ども用の製品として、今年9月に売り出した。初年度10万本の販売を計画したが、ユニークな形状や機能が評価され、計画を上回るペースの売れ行きとなった。

主に上部から集光し(左)、耳かきの先端が光る(右下)

 価格は1260円。開発したレーベン販売(横浜市)は、学校給食用の各種調理器具や日用品を手掛け、約100件の特許を保有する開発主導型のメーカーだ。商品は「ののじ」ブランドで統一されており、社長の高部篤(61歳)を中心に開発する製品群は、いく度も各種デザイン賞を受賞するなど評価が高い。このママ・ミエールも6回目を迎えた今年の「キッズデザイン賞」で優秀賞を獲得した。

 10年余り前から商品化している耳かきは、機能性を重視したものばかりで、累計販売は300万本を超えている。開発の発端は、高部が2年ほど前に透明な円筒形のプラスチックで、上部からの光がきれいに底部に抜けるという現象に注目したことだった。

 ライトなどを使わずに、外部の光で耳の中を照らせないか─。高部は新たな耳かきへの応用を考えた。子どもの時分、母親に耳そうじをしてもらったことを思い浮かべた。安らぎの時間ではあったが、耳の中が見えにくい時は、母親が耳たぶを引っ張って覗こうとしたので「痛い思い出」でもあった。

 かねて同社には、子ども用の耳かきを要望する声が多く届いており、高部はプラスチックを光が通過する現象を生かした製品の開発に着手した。最終的な製品の形状は、光を入れる上部がロート状になっているが、これは「設計の初期段階で、ほぼ決まった」(高部)という。光が物質に入射した際、一定の条件で光が物質内から漏れずに反射を繰り返す原理を考慮し、形状を決めていった。ロート状の部分は「集光部」と呼ばれており、集めた光は内部で反射しながら先端部へと導かれる。

 匙状の先端部は、中央に穴を開け、ドーナツのような独特の形状とした。この形には様々な意図がある。第1に「光の通路を2つにすることで、光の拡散を促す」狙いだ。先端部まで来た光は、ふた手に分かれ、ループ状の経路を通って抜けていく。これによって広い範囲を照らせるようにしたのだ。

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