2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月26日

 米のパートナーは伝統的な欧州とアジアの同盟国に加え、ブラジル、インド、インドネシアなどの新興民主国、アフリカ連合やアラブ連盟やGCCなどがなる。

 前方パートナーシップ戦略は、世界的分業になる。ペンタゴンは主要戦闘などに備えるとともに、パートナーとの協力を深め、空中給油などの能力を提供する。国務省はパートナーに近隣地域の安定化を図るように勧め、その代わりにパートナーは世界的な問題に発言力を持つようにする。これはリビア、マリでの例のように可能である。欧州は兵器の共同化を進め、アジアの同盟国はよりマルチで行動すべきである。米の軍事支援は増大し、アジア、欧州での自由貿易地帯はこの前方パートナーシップの強化に役立つ。

 米は退却することなしにリバランスすべきである。パートナーに能力を与え、より大きな責任を負担してもらうことはこれを可能にする。

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 この論説は、予算削減の中で今後の米の安全保障政策がどうなるかを論じたもので、へーゲル、ケリーの両名が前方パートナー戦略と呼ぶべきものを採用すると見通しています。

 この戦略は、同盟国などにより大きな役割を求めるが、米が対外コミットメントを維持し、それをうまく使って行くという戦略です。同盟国としては、負担の増大になりますが、それは畢竟は避けられないことであり、米がこういう方向性を打ち出すのであれば、米の対外コミットメントは維持されるわけですから、歓迎してよいでしょう。

 この論説でも触れられているオフショア・バランス論は、孤立主義的伝統とあいまって同盟軽視につながりうるものです。アジア・太平洋地域ではグアム基地を重視し、在日米軍基地を軽視する方向性を持ちます。それは、アジア・太平洋の、ということは取りも直さず我が国の安全保障にとって良いことではありません。

 米の同盟網こそ、中国が真似しようにもできない米と同盟国の強みであり、これを維持することは、米と同盟国にとって重大事です。同盟強化はいろいろな形をとり得ますが、大局的には、論説がいうような方向で協力していくことが望ましいと言えます。

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