2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月7日

 しかし、北朝鮮が開城工業団地の廃止を求めていない現状で、韓国政府が同団地からの全面撤収に踏み切れば、北朝鮮の歪んだロジックから見れば、韓国が北の脅迫に屈したこととなり、金正恩の大きな政治的手柄として喧伝されるでしょうし、また、「韓国側が勝手に出ていくのであるから、残った工場施設をどのように処分しようが北の勝手である」と言い出すものと思われます。一方、韓国の世論調査は、多くの韓国国民が開城工業団地を支持していることを示しています。こうした中で、朴政権が韓国側から撤退を言うのは、政治的リスクが高いと思われます。

 開城工業団地については、安定供給が確保できないとして、自動車部品を同団地で製造している韓国企業に対して、発注元にあたるインド企業が取引中止を通告してきた事例が報じられています。そういうわけで、韓国の経済界では同団地への関心が薄れているとのことですから、わざわざ撤退を言うよりは、自然消滅させるのが上策かもしれません。

 開城工業団地は、日本とは直接的関係が強いものではありませんが、韓国の北朝鮮に対する複雑な感情と利害を改めて教えてくれる、良い材料の一つと言えるでしょう。

[特集] 北朝鮮の暴走に、どう対峙すべきか?
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