2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2013年5月23日

 10年12月、日本は防衛大綱で琉球諸島の防衛に重点を置いた新たな政策を示した。「動的防衛」というこの概念は、日本の領土防衛計画における大きな変化を示している(詳細は、日本国際問題研究所の小谷哲男氏の論文「China's Fortress Fleet-in-Being and its Implications for Japan's Security」を参照)。自衛隊(陸海空)は新たなアプローチを行うために定期訓練を始めている。

 安倍首相は動的防衛の概念を補強するように、日本、米国、オーストラリア、インドは、すべての国に地域内の海路・空路への制限なきアクセスを保障するために「民主的安全保障ダイヤモンド」という安全保障連合を形成できると述べた。また安倍首相は、主要加盟国を自ら訪問したり閣僚を派遣したりして、ASEAN諸国との関係強化にも乗り出している。

 日本の動的防衛という概念は、筆者が提唱した「オフショア・コントロール」という戦略とも結びつく。この戦略は通商破壊を通じて中国を抑止し、必要とあらば倒すことに焦点を合わせる。米国と日本は第一列島線を防衛することで中国の海上貿易を妨害する。そうすると中国はほぼ解決不能な戦略問題に直面する。中国は海上輸送よりずっと高いコストを払おうとも、陸路を使った輸送では十分な貿易を賄えないからだ。

 一方で、船舶輸送を守るためには、中国は制海能力を備えた海軍を築かなければならない。それには数兆ドルに上る巨額の資金と数十年に及ぶ歳月がかかる。たとえ実現できても、中国が航路を利用できる保証はない。中国の侵入する航路は制限されており、比較的容易に遮断できるからだ。

 この戦略を使えば、同盟側は中国を上回る兵力を確保でき、陸海双方からの支援と地理的な優位性を得られる。さらに、この戦略は防衛目的であるため、同盟側が中国本土を攻撃することはない。平時の演習はすべて防衛作戦とし、中国にも内容を公開する。そうすれば中国側にも、この戦略は中国が攻撃を仕掛けた場合に限って採用されることが分かる。中国がこの戦略は攻撃的だと訴えても、大半の国は中国を信じない。

 中国との紛争が中国と日米同盟のみならず、世界経済にとっても破壊的な影響をもたらすことは明らかだ。このため日本と米国は地域の同盟国と協力し、中国を刺激しないようにしながら、中国は日本に対する武力行使で政治的な目的を達成することはできないということを明確にさせる戦略を築かなければならない。

*英語版は近日公開予定です。
*和訳の際に、記事の一部を編集しています。

 

◆WEDGE2013年5月号より

 

 

 

 

 

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