東シナ海、南シナ海における中国の近年の強硬姿勢と北朝鮮の核の脅威により、地域内の緊張と紛争の可能性が高まる。これを安定させるためのポイントは、地域の同盟国や友好国との連携、中国の覇権的行動に対する海からのアプローチだ。
マラッカ・ジレンマ埋める軍備増強
中国経済は海洋貿易に大きく依存している。中国の港湾はすべて第一列島線の内側にあり、海上封鎖に対して極めて脆い。この脆弱性を痛感する中国はかねて、「マラッカ・ジレンマ」と呼んできた。中国が輸入するエネルギーは、通行が厳しく制限され、自国から遠く離れたマラッカ海峡を通るからだ。
こと製造業に関しては、さらに深刻なジレンマを抱える。中国経済の約27%は輸出に基づいており、輸出は遠く離れた市場への自由なアクセスに依存している。外国市場へのアクセスはすべて、第一列島線の隙間を通る通商航路を利用する必要がある。外国海軍が支配する隙間だ。
そう考えると、中国が自国海軍に投資しているのも驚くに当たらない。このような投資は歴史上、台頭する新興大国では当たり前だったし、海洋貿易に大きく依存する国にとっては戦略上不可欠だとも言える。
軍備増強は珍しいことではないが、中国の目的は地域、特に日本の懸念材料となる。米議会調査局(CRS)の海洋問題専門家、ロナルド・オルーク氏によれば、中国の海軍近代化にはいくつかの長期目標がある。
・地域内で中国の軍事的リーダーシップを発揮し、域内における米国の軍事的影響力を排除し、最終的に地域からの米軍撤退を促す。
・石油、ガス、鉱物資源の探査権にも関係する海洋領有権紛争で中国の主張を守る。
・石油などの輸入で中国が次第に依存度を高めている海上交通路を守る。
こうした目標は、中国が世界市場へのアクセスを確保するために必要な範囲を超えており、目標が達成されれば、中国が東アジアの安全保障環境を支配することになる。中国はこの目標を達成するために、米国海軍を地域外にとどめておくことを目的とした「遠海」作戦の展開と接近阻止・領域拒否(A2AD)作戦の支援を行えるよう海軍を増強する。
中国は現在、攻撃型原子力潜水艦を5隻、在来型の攻撃型潜水艦を50隻以上展開している。幸い、通常型潜水艦の半分以上は30年以上経った旧式の潜水艦だ。また、中国は水上艦部隊も増強しており、駆逐艦を26隻、フリゲート艦を53隻、ミサイル艇を93隻保有している。艦齢も能力も様々だが、比較的新しい艦船は高い戦闘力を持つ。