2024年4月27日(土)

科学で斬るスポーツ

2014年7月28日

 翻って日本は1試合平均のシュート数は15本とドイツと遜色はないが、ゴール枠をとらえたシュートのうち、ペナルティーエリア内からのシュートは2本と、エリア内に食い込めていない。エリア内に入り込むドイツのような「組織的連携」「激しさ」「先見力」などがない。わずか2点しかとれない理由はここにある。

 サッカー戦術に詳しい大東文化大の川本竜史准教授によると、前回の南アフリカW杯で、日本は1試合平均(全4試合)11.5本のシュートしか打てなかったが、枠内シュートをとらえる率は59%と全出場チームトップだった。少ないチャンスを正確にものにし、4得点をあげた。また、ペナルティーエリア内に侵入し、シュートしたのはブラジル大会より多く、1試合当たり4回。守備重視といわれた前回の方が、得点率の高いペナルティーエリア内に侵入できたことを示している。

科学的データに基づき、戦術を組み立てたドイツ

 ドイツの強さも一朝一夕で獲得したわけではない。いくつかの要因があるが、一つは2004年夏の欧州選手権の敗退後、本腰を入れた育成強化策が実ったことがある。国内全クラブに2軍のような組織の設置を義務づけた。多くの若手が次々に育っている。

 二つ目は、移民政策の推進で、ポーランド出身のFWミロスラフ・クローゼら移民系選手の活躍がある。今大会の23人の選手登録中6人が移民系だった。

 三つ目は、代表選手の多くが、欧州選手権の王者バイエルン・ミュンヘンのメンバーだったことだ。代表選手は、寄せ集め軍団が多く、互いの特徴を理解し、同じ目線でサッカーをするのに時間がかかる。その点、ドイツはこうした互いを知るための時間が必要なかった。レーウ監督は「(互いに打ち解けるために)トランプをする時間もいらなかった」とメディアに笑顔で語っていた。

 そして、四つ目、このコラムで最も強調したいことである。科学的なデータに基づく戦術を選手たちが共有していたことがある。テクノロジーの進化をうまく活用し、選手のスパイクなどにICチップを埋め込み、選手の動き、運動の激しさ、走行距離、最高速度、パス出し、パス受けの本数などをデータとして集め、選手のコンディショニング、トレーニングや戦術に役立てていたことがある。ドイツはこのテクノロジーを最も利用したとされる。

 しかし、科学的データは、それだけではただの数字に過ぎない。これをいかに選手に伝え、共有するか。データをわかりやすい言葉に翻訳するコーチ陣のコミュニケーション能力も欠かせない。ドイツには、選手以外にもこうしたデータを読み解く人材も豊富だったと言える。

W杯6大会ぶり4度目の優勝に輝いたドイツ (写真:Press Association/アフロ)

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