2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月15日

 所得格差は、米国の国内問題としても是正されるべきであるが、米国の国際的な活動への影響からも是正の必要がある、と論じています。

出典:Kurt M. Campbell ‘How income inequality undermines U.S. power’(Washington Post, November 28, 2014)
http://www.washingtonpost.com/opinions/how-income-inequality-undermines-us-power/2014/11/28/53fab4e4-74e5-11e4-9d9b-86d397daad27_story.html

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 この論説は、米国の所得格差の拡大が国内的にも、更には米国の国際的な役割にとっても問題であると指摘しています。その通りでしょう。是正すべきであるということですが、是正策が論じられているわけではありません。

 分厚い中間層が望ましいことに異論を持つ人は、日本でも米国でもあまりいません。従って、格差是正を目的とすべきであるとの論には特段の新味はありません。どうすれば是正できるかが重要ですが、「21世紀の資本論」、新自由主義反省論、トリクル論とその批判など百家争鳴です。軍事外交専門のキャンベルにその是正法の提案を期待するのは無理でしょう。

 軍事に関係する人が国民の少数になったのは、軍事技術がその方向に発達したためで、国民軍が国民全体を巻き込んで戦争する時代はもう帰ってこないのかもしれません。

 米国が対外関与に後ろ向きになることは日本にとっては好ましいことではありません。対外関与消極論はオバマ政権ゆえというところもありますが、キャンベルが指摘するように、所得格差の増大など、より深い状況変化による面もあるでしょう。所得面のみならず、米国が分極化していることが米国の対外関与に与える影響は、今後よく観察する必要があります。

 なお、所得格差については、中国もひどく、社会のモデルとしてのソフト・パワーは、中国は米国には全く及びません。

  
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