2024年4月27日(土)

Bangkok駐在便り

2016年1月15日

課題山積で困難な状況に

 経済発展の2本柱が、外資の誘致と産業の高度化。周辺国に比べて、経済発展著しいタイだからこそ避けては通れない道であり、すでに政府も「単純労働で生み出される製品だけでは世界と対等に戦うことはできない。より技術力の高い製品、技術を売っていかなければ世界に置いてけぼりにされる」と危機感を抱きながら、推し進めている。

 製造業でのイノベーションも求められており、今後、ハイテク産業の恩典もますます増えていくだろう。当然、多くの日系企業も期待され、実際にここ数年でIT系事業分野に対する恩典も拡大し、2011年の大洪水の影響などもあったせいか、クラウドによるシステム構築はトレンドにもなっている。SNS大国という背景から、ソフトウェアやアプリケーション開発にも非常に可能性があり、今後も多くの日系企業が進出してくるとみられている。

 また、輸出も大きな課題。3年連続でマイナスが続く輸出は、2015年もマイナス5.5%とふるわなかった。多くの経済機関が、今年は3%未満だと予測しているが、前述したソムキット副首相は5%を達成すると息巻いている。

 物価の高騰も国民生活には大きな影響を与え、解決しなければならない課題の一つ。タイの人件費は上がる一方で、自ずと物価も高騰。実際にバンコクに住んでいても、ここ2、3年で上がった印象を受ける(詳細は次回紹介)。ただ、ここら辺はタイ政府も悩みの種となっており、国民の所得の増加(人件費増)は大きな目標である一方、外資も呼び込みたいと、微妙な立場に置かれている。

 ただし、前述した産業の高度化により、さらに技術力の高い製品が売れれば、これらの問題も解決すると考えているのも事実。また、観光大国という側面もある。むやみに物価が高騰すれば、そちらへの影響も避けられない。非常に難しい状況であるのは間違いない。

自国経済立て直し図りつつ他国にも利益を

 最近のトピックでは、月収3万バーツ以下の就業者に対して、所得税免除の動きも出ている。バンコクの大学生の新卒生の給料が2〜2万5000バーツだと考えれば、就業してから数年は所得税の免除が認められるということである。日本人にとってみれば、かなり大きなニュースに感じるものの、タイ人に聞いたところ反応は薄かった……。

 一方で、ついに導入される固定資産税は範囲を拡大する見込みで富裕層にとってはあまりうれしくないニュース。とはいえ、この国は富裕層があまりに優遇されるシステムであるため、先進国の仲間入りをするには不可欠な判断に違いない。すでに頭一つ抜けているシンガポールに追いつくためにも、ここら辺の制度改定は当然のように思える。

 インラック政権時に実施されたマイカー減税のあおりも受け、自動車の販売台数が落ち込み、引っ張られる形で消費がふるわなかった2015年。まずは、落ち込んだ消費を取り戻すこと、そして外資の誘致が目標。また、観光については今年も好調が続くとみられており、安定しているといえるだろう。

 ただ、個人的には、AECがスタートしたからこそ、タイが東南アジアの盟主となり、他国にも利益をもたらすような政策を実施してもらいたい。もちろん自国の経済も大切だが、AECに対し、タイの覇権を知らしめてほしいのも事実。すでにタイは、その段階まで来ているのではないかとも思っている。

  
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