2016年、タイ経済は課題が山積している。2015年、GDP成長率は、当初の目標より低い数字の2.5%にとどまり(見込み)、1月6日に世界銀行が発表した今年から3ヵ年のGDP成長率は、2%〜2.7%といずれも低迷するという見込みだった。背景には、いまだ軍事政権が続く政局の不安定さや民間投資の伸び悩みが挙げられている。
不景気脱却に躍起となるタイ政府
経済担当のソムキット副首相は、昨年からありとあらゆる経済施策を発表し、「不景気からの脱却」に躍起になっている。まずは日系企業にも直接影響を及ぼす外資の誘致。タイ政府は、産業の高度化を目指し、「クラスター制度」の導入を公表した。これは「スーパークラスター」、「その他クラスター」、「クラスター支援産業」の3種類に分けられ、自動車、電気製品・エレクトロニクス、通信機器、石油化学・化学などで、承認を受けた事業の法人税を8年間免除、その後5年間半額とする施策。「スーパークラスター」の中でも特に重要な事業は、法人税免除の期間を10〜15年に延長するという大盤振る舞いの恩典も明らかにしている。
一方では、国境付近に特別経済特区(SEZ)を設置し、こちらは比較的作業が単純とされる製造業企業向け。昨年、発足したアセアン経済共同体(AEC)により、ヒト・サービス・モノの流動を見越した施策であり、カンボジアやミャンマー、ラオスといった後進国からの人材確保も見込む。
タイは人口が6500万人だけで、労働力の確保が大きな命題となっているのは周知の通り。また、タイはエネルギーを自国で産出することができず、人口ピラミッドは日本と同様のカーブを描き、労働力の確保も危ういとあれば、国外に頼らざるを得ないのは必至。内需だけでの経済回復も厳しく、ゆえに外資の誘致がマストとなっている。