世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月26日

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 中国と台湾の対立がエスカレートすれば、逆に中東やロシアが霞むくらいの問題になります。したがってサターの議論は、中台関係が悪化しなければ、という条件付きのものです。

 中国側が蔡英文に対し猜疑心を持つことは良く理解できます。蔡は、対中関係に関して手練れの政治家で、直球を投げてくることはありません。中国は蔡の言葉の裏を考える必要があります。しかし、中台双方において、現状を意図的に変えなければならない状況にはありません。それに我々の想像以上に、中台には非公式の意思疎通のチャネルがあります。今後の展開はそれぞれ国内的に、現状を変更しなければならない強力な要因が生じるかにかかっています。

米国の対台湾政策は変化のときか

 習近平は、中華民族の偉大な復興という大目標への歩みを、2020年の「第一の百年(中国共産党建党百年)」の奮闘目標の達成を通じて進めようとしています。江沢民も任期の終わりにかけて台湾問題を一歩前に進めて「歴史に名を残す」ことを試みましたし、胡錦濤も新しい政策を打ちだそうとしましたが、習近平には「2020年」があり、その目標達成が経済問題の深刻化を含めて国内の事情により難しくなった場合を除き、台湾問題に無理に踏み込む必要はありません。台湾の世論も基本は現状維持であり、台湾側から中国を刺激して実利を失い経済を悪化させる必要もありません。中国側が追い込まない限り、台湾も自分たちから問題を表面化させるつもりもありません。

 もちろん相手を不快にさせるだけの小さな動きが、本当の衝突を生み出すことはあり得ます。中国の国内問題の深刻化が台湾への強硬姿勢をとらせることもあり得ます。その時点で中台の軍事力の差がさらに広がり、米国の決意が曖昧であれば、中国を軍事的行動に駆り立てる可能性はあります。したがって米国が中国の動きを注視し、中期的な観点から対台湾武器売却を実施し、日本など同盟国や友好国との軍事協力関係を強化し、中国に対し明確なメッセージを発出し続けることは極めて重要になります。この意味では、米国の対台湾政策は、変わらざるを得ません。

  
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