海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年7月6日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 上で紹介した非従来型の選挙運動を展開したのは、ルワンドウスキ元選対本部長です。トランプ候補は、そのルワンドウスキ氏を突然解雇し、伝統的で従来型のポール・マナフォート政治コンサルタントに本選を任せました。確かに、同候補の政策を修正し現実路線をとるという側面においては、マナフォート氏の選択は正解であるかもしれません。しかし、クリントン陣営は革新的で非従来型の選挙運動に慣れていないのも事実です。

クリントン陣営のロゴが入ったクリントン候補のトランプ(筆者撮影@カリフォルニア州サンフランシスコクリントン選対)

トランプ陣営の戦略ミス

 トランプ候補は、5月3日の中西部インディアナ州での共和党予備選挙に勝ち、テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)及びジョン・ケーシックオハイオ州知事を撤退に追い込み、その時点で事実上の共和党候補になりました。それにもかかわらず、同候補は共和党候補指名争いにおいて歴史的な得票数を目指すと語り、6月7日のカリフォルニア州予備選挙に時間とエネルギーを費やしたのです。結局、同候補は1400万票を獲得し、歴代の共和党候補の得票数を超えることができたのです。同候補は指名争いが終了すると、すかさず共和党の「征服者」であるというメッセージを発信し、力で党内の統一を図ろうとしましたが、思惑通りにはいきませんでした。

 一方、クリントン候補は、インディアナ州予備選挙からカリフォルニア州予備選挙までの5週間、トランプ候補とバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)の2人を相手に二正面作戦を強いられていました。クリントン陣営の視点に立てば、その間、トランプ候補が先手を打って激戦州オハイオ州及びペンシルべニア州で本選に向けた戦いを開始しなかった点が救いでした。同候補は、5週間のアドバンテージを活かせなかったのです。その結果、本選におけるスタートダッシュの機会を失ったのです。

 クリントン候補が民主党の事実上の候補となると、クリントン陣営と同候補を応援する政治団体は、早速、8つの激戦州(オハイオ州、フロリダ州、ネバダ州、コロラド州、バージニア州、ノースカロライナ州、アイオワ州、ニューハンプシャー州)でテレビ広告を打ちました。6月のみでそれらの州でなんと2300万ドル(約23億6000万円)の選挙資金を投入したのです。民主党候補指名争いでモタモタしていたクリントン候補は、逆にエンジンを全開して激戦州でトランプ候補に対して先手を打ち、優位に立つことができました。

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