オトナの教養 週末の一冊

2016年8月18日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 自分も経験があるが、賃貸マンションでは契約書や管理規約などで「転貸禁止」をうたっている。転貸といってもいろいろあるが、今の時代でいえば、「民泊させるのはダメ」ということに直結するのだろう。本書でも紹介されているように、マナーを守る意識の希薄な外国人が、マンションの共用スペースで騒いだり、ルールに関係なくゴミを出したりすることは既に起きており、問題にもなっている。これからも広がることは十分考えられ、相応のルール作りは当然、必要であろう。

 ただ、本書を読むと、当面の間、日本のホテル不足は相当深刻であり、民泊を進めることは合理的な選択である。そこにあまり規制を強くかけすぎると、うまく回らないという点も確かである。本書で指摘するように、空き家対策としての民泊の活用などはおおいに考えられていいし、特に地方での空き家対策には有効な一打になる可能性がある。

訪日外国人がもたらす効果を
地方へ波及させるには

 本書が興味深いのは、最近のホテル業界の経営状態にも言及しているところである。著者が指摘するように、以前はもうからないビジネスだったホテルが、時代の流れで非常にもうかるビジネスに変貌してきたことや、今後国内のビジネスホテルの淘汰が始まる一方、超高級リゾートホテルが伸びるであろうという指摘は印象的だ。日本のビジネスホテルを稼げるビジネスモデルとして輸出してはどうかという視点も新鮮である。

 考えてみれば日本のビジネスホテルにはサービスの要素が詰まっており、日本流の「おもてなし」の神髄であるといえる。まさにノウハウを輸出して収益が期待できる性質のものである。

 訪日外国人旅行客の増加に伴って、日本人があまり行かないような地方に穴場を見つけて多くの人が訪れるようなことも一部に起きているが、一般的には、まだまだ大都市への訪問が中心だ。訪日客の増加で地方が経済的な恩恵にあずかる状態までには十分到達していない。訪日外国人がもたらす効果を地方に波及させる仕掛けができれば、地方での取り組み方もまた違ってくるだろう。

 今後本格化する宿泊施設不足や民泊への本格的な対応の中で、いかにポジティブな効果を地方にも及ぼし、無理のない形で定着させてゆくかが問われるだろう。民泊にどう向き合うかで、地方創生にも影響が出てくるという意識を政策担当者や業界関係者は共有してゆかないといけない。本書はそうしたことも気づかせてくれる。

  
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