世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月21日

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 全くの正論です。トランプがグローバリゼーションを叩けば叩くほど、中国の機会を広げ、中国がグローバリゼーションの旗手になり、中国にリーダーシップを渡すことになります。トランプはグローバリゼーションを無原則に叩くのではなく、問題があればそのルールや統治を変革するために関係国と共に働くという道を選ぶべきです。トランプ政権が早く学習することを願いたいものです。

国際政治は真空を嫌う

 「国際政治は真空を嫌う」というのは正鵠を射ています。真空ができると不安定になります。今でもそれは有効な議論です。

 1月17日の習近平のダボス演説はシュルリアルなものでした。耳を疑うようなものでした。長い演説の主たる時間は中国の経済政策に割かれたものでしたが、グローバリゼーションと自由貿易の擁護、保護主義の阻止が演説の重要なメッセージとなりました。道徳や価値の世界でも中国がリーダーになろうとしているようにも見えました。習近平にこのような大舞台を与えたダボス・フォーラムに対しフォンテインらが批判的であることが行間に窺われます。

 米国の内向き化の傾向につき、フォンテインらは、暗にオバマとトランプを批判しますが、オバマとトランプを同列に置くのはどうかと思います。オバマはシリアや南シナ海などで不決断、不十分なこともありましたが、世界の現実やビジョンについては確固たる理解を持っていました。現実と理想の間で呻吟していたことは人間的でさえありました。他方トランプは全く異質です。世界の現実を理解することさえ拒んでいます。

 トランプの就任演説は、荒く、暗く、失望でした。トランプは選挙後も変わっていません。世界に向けたメッセージもISの撲滅以外は皆無でした。演説壇上にいた4人の元大統領にお構いなく政治家への痛烈な批判を続けました。就任後まだ関係閣僚が就任する前からTPP撤退等前政権の政策をひっくり返す行政命令等に次々と署名しています。ゼーリック前世銀総裁は、1月16日付フィナンシャル・タイムズ紙のコラムで、トランプを理解するためには同人を共和党大統領というよりもインディペンデントの大統領と考えるべきだと述べています。興味深い指摘と言えるでしょう。

 トランプ政権との付き合い方はなかなか難しいですが、次の三点が重要ではないでしょうか。第一に、トランプのツイッターなどには少し「鈍感」になって、いちいち反応することは避け、正に「腰を落ち着けて」トランプ政権とエンゲージしていくことが重要と思われます。種々理不尽なことを言って来たり脅してくるかもしれませんが、大事なことは忍耐でしょう。第二に、閣僚レベルの意思疎通が大事です。首脳間の意思疎通は最重要ですが、大統領とは違って現実的な、正しい考えを持っているように見える主要閣僚は頼りになる可能性があります。

 他方、今後起き得る内部対立(大統領対閣僚、大統領側近対その他の者等)にも注意を要します。第三に、アジア諸国や豪州、欧州の主要国等との意思疎通を密にする必要があります。不必要に二国間の枠組に追い込まれないためにも、同盟国、友邦国と共に米国とエンゲージしていくことが重要です。

  
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