2024年4月26日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年6月5日

非効率企業は淘汰され、労働力が効率的企業に流れる

 日本には、効率的な企業も非効率な企業もあります。労働力が不足した時に、効率的な企業に優先的に労働力を振り向けることができたら、経済にとって素晴らしいことです。そして、それは可能なのです。経済学者の好きな「価格メカニズム」が機能し、「神の見えざる手」が経済を望ましい方向に導いて下さるのです。

 労働力不足が深刻化してくると、賃金が高騰します。そうなると、高い賃金を払えない非効率企業は労働者を採用出来ず、高い賃金を支払える効率的な企業だけが労働者を採用できることになります。労働力不足が更に進むと、効率的な企業が高い賃金で非効率企業の社員を引き抜いてくるようになるかもしれません。こうして、日本経済全体として見た場合の労働力の分布が変化し、日本経済全体としての効率性が上がっていくのです。

非効率企業の存在価値は景気次第

 2001年に始まった小泉構造改革は、金融機関に不良債権処理を促しました。表面的には、金融機関の健全化が目的でしたが、彼等の真の目的は、借金も返せないような非効率な企業を淘汰することでした。非効率な企業を淘汰すれば、労働力等が効率的な企業に流れていき、日本経済が効率化するだろう、と考えていたわけです。

 当時、筆者は不良債権処理に反対でした。「失業者が大勢いるので、効率的企業が雇いたければ失業者を雇えば良い。わざわざ非効率企業を潰して景気を一層悪化させる必要はない」と考えていたわけです。失業者が大勢いる時には、非効率企業であっても労働者を雇用しているだけで、日本経済にとっての存在意義は大きなものがあるのです。

 ところが15年が経過し、労働力不足になると、筆者も小泉構造改革を支持するようになりました。「時代の半歩先を行く指導者は天才だ。でも15年も先を行く指導者は、問題だ」というわけです(笑)。

 問題は、銀行の不良債権問題は解決していて、淘汰すべき企業が見当たらないことです。しかし、良く見れば、そうでもありません。

 リーマン・ショック当時、「金融円滑化法」が成立し、地方銀行などが、中小企業への返済猶予や融資条件の変更などに前向きに応じました。それによって倒産を免れた非効率企業が多数ありました。しかし、その後も経営が改善しなかった借り手も多かったようです。

 この情報に接して、「返済猶予等は無駄だった」と考えた読者は多いかもしれませんが、筆者はそうは思っていません。リーマン・ショック後の、もっとも失業対策が必要な時に、これらの借り手は従業員の雇用を守ってくれたのです。日本経済に対する偉大な貢献をしたのです。その貢献を可能にしたのが、金融円滑化法だったのです。

 しかし、時が流れ、少子高齢化による労働力不足の時代になりました。銀行融資により非効率企業を延命しておく必要性は薄れ、むしろ非効率企業は淘汰されるべき時代になったのです。地銀としても、「この企業を支援しないと地元の失業率が上昇してしまう」と考える必要はなくなったのです。そうであれば、そうした支援を順次打ち切り、労働力を効率的な企業に流してやるという事も、要検討かも知れませんね。


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