オトナの教養 週末の一冊

2017年6月30日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

「人類の歴史理解にとって最大の欠落」とは

 3点目は、人類の種としての繁栄、すなわち、「サピエンスによる地球支配」が何をもたらしたか、という視点である。

 <私たちは環境を征服し、食物の生産量を増やし、都市を築き、帝国を打ち立て、広大な交易ネットワークを作り上げた。だが、世の中の苦しみの量を減らしただろうか? 人間の力は再三にわたって大幅に増したが、個々のサピエンスの幸福は必ずしも増進しなかったし、他の動物たちにはたいてい甚大な災禍を招いた。>

 過去の出来事が、個々のサピエンスや他の生物種の幸せや苦しみにどのような影響を与えたかについては、これまでほとんど顧みられなかった。

 <歴史書のほとんどは、偉大な思想家の考えや、戦士たちの勇敢さ、聖人たちの慈愛に満ちた行ない、芸術家の創造性に注目する。彼らには、社会構造の形成と解体、帝国の勃興と滅亡、テクノロジーの発見と伝播についても、語るべきことが多々ある。だが、彼らは、それらが各人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたのかについては、何一つ言及していない。>

 著者は、このことを「人類の歴史理解にとって最大の欠落」と語る。「この欠落を埋める努力を始めるべきだろう」という著者の言葉に、少なからず共感した。

  
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