中東を読み解く

2018年4月16日

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 むしろ、攻撃はアサド政権に打撃を与えるというより、米欧の「レッドライン」(超えてはならない一線)を示すことが目的だったように見える。逆に言うと、化学兵器を使用しない通常兵器であれば、どんな攻撃でも、どんなに民間人に死傷者が出ようとも米欧は容認するというシグナルでもある。アサド氏がそのように受け取ったとすれば、今後も焼夷弾のような樽爆弾など、残虐な殺戮兵器が使われ続けることになるのは確実だ。

戦略なき「ミッション完了」

 トランプ大統領は攻撃の後、「完璧な攻撃だった」「ミッションは完了した」と宣言し、攻撃が成功したことを誇示した。しかし「ミッションとはそもそも何だったのか」(米紙)、大きな疑問が残る。アサド政権の化学兵器の壊滅に使命を限定すれば、確かにその化学兵器製造能力は今回の攻撃で弱体化したのは事実だが、化学兵器を他に隠匿していないという保証はない。

 最も重要なことはこの攻撃が、50万人以上の国民が犠牲になり、1000万人以上が難民化しているシリア内戦を、終結に導く一助となるかどうかだ。だが、その可能性は小さい。アサド政権だけではなく、ロシア、イランの米国に対する反発が強まり、双方の対立の激化は免れまい。

 トランプ氏の思い描くミッションには元々、シリアの平和や安定の確保などが含まれているとは思えない。トランプ氏が米第一主義の観点から折に触れて言ってきたのは、2001年の米中枢同時テロ以降に始まった米国の中東介入は「人命とカネの無駄遣いだった」というものであり、4月に入ってからもシリアからの早期撤退論を語っていた。

 大統領は数日前に遊説先で、シリアの内戦について「他の連中に面倒を見させておけばいい」と本音をのぞかせ、内戦終結や政治決着に主導権を発揮するつもりのないことを明らかにした。さらに攻撃の際の発表でも「中東はやっかいな場所だ。米国は友人ではあるが、地域の運命はその国の国民自身に委ねられる」と突き放した。そこには、米国の利益にならない地域から1日も早く撤退したい、との思惑がにじむ。

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