中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年5月15日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)などがある。

スマホで写真を撮りまくる人々

 浜海文化中心は約12万平方キロメートルという広大な面積を誇る複合文化施設で、同じ建物の中には、浜海新区図書館のほか、芸術ホールや美術館、探索館(博物館)、市民文化センター、ショッピングセンター、飲食店街などがある。

浜海新区文化センターの外観

 浜海新区図書館は17年10月にオープンした。6階建てで、展覧区(閲覧エリア)、学習区(ラーニングエリア)、社会科学図書、文献閲覧区などがある。図書館の延床面積は約3万3700平方メートル。設計は世界的に有名なオランダの建築家集団、MVRDVと天津市政府が共同で手掛けた。同事務所は03年に新潟県十日町の「まつだい雪国農耕文化センター」を設計したことで日本でも知られている。

 図書館への入り口には手荷物検査とボディチェック機があり、ペットボトルやカメラは持ち込みは禁止(これは中国の他の図書館と同様。階段が多いからか、ハイヒールやサンダルでは入場禁止になることもあるらしい。カメラなどは隣接するコインロッカーに預けるようになっていた)。ちなみに、外国人はパスポートの提示が必要かと思ったが、そうしたチェックは一切なかった。日本人の姿は見かけなかったが、西洋人や中国人の観光客の姿は多く見かけた。

 中に入ってみると、大勢の人々がスマホで写真を撮りまくっていた。カメラ持ち込みは禁止なのに、スマホでの撮影はOKで、階段に腰掛けながら、あるいは、本棚をバックにして、ほとんどの人がポーズをとって写真を撮っている姿が目に飛び込んできた。本を読んでいる人よりも圧倒的に多い。

 以前ネットで見たのとまったく同じ光景が広がっていた。まるで棚田のように、波打つようなデザインの本棚がいちばん下から天井にまで連綿と連なっていて、なんだか万華鏡のようでもある。下のほうは階段になっており、階段と階段の間の奥にも本が詰まっている。棚田のようになっている本棚の間にも本がぎっしり並べられている。真ん中にはドーム状の物体があり、それを取り囲むようにして四方に階段があるという構造だ。

中央の大きなドームも印象的

 「なるほど、これがあの写真で見たインスタ映えする図書館なんだ!すごい」

 私が斬新なデザインに感心していると、天津在住の友人は、にんまりしながら「ここを見て」と指さした。その方向を見ると、なんと、本棚に収められていると思っていたのは本ではなく、本の絵だったのだ。「え~! これ、絵だったの?」。ネットで見たときには気がつかなかったが、本棚に収まっているかに見えた本は“絵”だったのだ。まさに、「え~~!」という感じである。

 しかし、失望というよりも、私は逆に感心した。考えてみれば、当たり前かもしれない。下のほうはともかく、上のほうは、どう考えても手が届かないのだから。はしごを掛けても届かない距離に本がびっしり収められているので、「あそこにある本を取るのは大変だろうなぁ」などと呑気に思っていたのだが、まさか本の絵が貼ってあるだけとは、想像できなかった(私の想像力が欠落していただけなのかもしれないが)。だが、すべてが絵かというと、そうではない。一部はきちんと本が収納されている。絵が精巧にできているため、境目がわかりにくいだけだ。

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