世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月11日

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 加盟各国が国防費をGDP比2%以上にするというNATOの目標は、2014年9月にウェールズで開かれたNATOサミットで合意されたものである。トランプは就任以来、その履行を強く求め、当初は、NATO条約第5条の相互防衛の義務にコミットしない可能性を示唆するといった乱暴な発言さえしていた。その後は、防衛当局者の努力や、上記発言にもある通り、トランプ自身が第5条にコミットすることを明言するようになったこともあり、軋轢の多い最近の米欧関係にあって、防衛関係は比較的堅調さを保ってきた。

 ストルテンベルク事務総長は、上記共同記者会見で、トランプが2%の目標遵守を強く働きかけたことに対し、「同盟にインパクトを与え、全ての加盟国が国防費を増額するようになった」と感謝を表明するとともに、各国にさらなる努力を促している。これは、トランプに媚びているというより、NATOの事務総長としての現実的な判断に基づくものであるように思われる。ロシアやテロといった共通の脅威に対処するためには、国防費の増額と能力の向上は不可欠なことである。上記会見で、トランプがNATO条約第3条に言及し、財政面だけではなく軍事的能力を含む貢献を求めたのは適切である。なお、トランプが槍玉に上げているドイツの国防費は、GDP比約1.2%であり、合意の遵守からは程遠い。

 トランプは上記会見で「同盟の強さは軍事力だけではなく、歴史、文化、伝統の深い絆にもかかっている」と言っているが、皮肉なことに、それ自体は正しい。国際協調主義や法の支配は、米欧間でのそうした絆の中心にある価値である。しかし、トランプは、それを踏みにじるような政策をとっている。とりわけ、イラン核合意からの一方的な離脱、鉄鋼・アルミへの不当な関税は、これまで何とか保たれてきた防衛関係にも深刻な影響を与えかねない。7月に予定されているNATOサミットでの議論の動向が注目される。

  
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