世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月12日

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 上記ポンペオの演説は、イランに対しては12項目の要求を掲げ「この降伏条件を呑んで白旗を揚げろ。それまでは制裁により先例のない金融的な圧力を見舞う」という内容である。同盟国と友好国に対しては、制裁に同調するよう求め、制裁破りを不問に付すことはない、と述べている。そして、核合意の欠陥を是正するという外交努力は放棄し、制裁一本鎗で米国の目指す目標を達成するとの趣旨である。確かに、イランは苦しいであろうが、目論見通りには運ばないであろう。米国の制裁は、イラン国民のナショナリズムに訴えることを可能にさせ、イランの現体制をむしろ強化することになりかねない。

 ポンペオの狙いについて、ワシントン・ポスト紙は5月21日付け社説‘Mike Pompeo sets the stage for perpetual conflict with Iran’で「結局のところレジームチェンジではないか」と推測し、フィナンシャル・タイムズ紙は5月23日付け社説‘Donald Trump sets America on a collision course with Iran’で「戦争か、レジームチェンジか、その双方ではないか」と疑っている。演説後の質疑応答で、計画達成に想定している時間枠を問われ、ポンペオは「結局のところ、イラン国民が時間枠を決めることになろう。イラン国民が彼等の政権について選択をするであろう。彼等が早期に決断すれば素晴らしい。決断しないのなら、我々は目標達成まで厳しい態度を維持するであろう」と応答した。これは「我々がやる前に政権を転覆しろ」と言っているのに等しい。上記2社説の推測には根拠があると言える。

 ポンペオの演説について、EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は声明を発表し、EUが核合意にコミットしていることを確認するとともに、合意は安保理で承認されたものであり、国際社会は全ての当事者がコミットメントを守ることを期待している、と述べている。これは、米国の一方的な離脱は合意違反だといっているのに等しい。米国は「離脱であって違反ではない」といっているが、詭弁の類である。モゲリーニは、「ポンペオの演説は核合意からの離脱が地域を核拡散の脅威からより安全にし、イランの行動に影響を与える上で我々の立場をより良いものにすることを証明してはない。核合意に代わるものはない」とも批判している。

 イラン核合意は、国連安保理決議2231が、これを国際合意として承認しており、正統性の高いものである。米国は、それに違反した挙句に制裁強化するとしている。そのような制裁強化に対し、日本としては、抵抗する手段があるのかどうか疑わしい。EUは抵抗する構えであり、ユンケル欧州委員会委員長は1996年の対抗立法(欧州企業に制裁を無視して取引を続けるよう命ずる「ブロッキング規制」)を利用すると述べているが、米国の金融制裁に対しては無力であるように思われる。いずれにせよ、EUの対応については、注目する必要があろう。
 

  
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