世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年7月2日

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 6月12日の米朝首脳会談を受けて、米外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、6月16日付のProject Syndicateのサイトで、「シンガポール・サミットの不確かなレガシー」と題し、米朝首脳会談は北朝鮮の核問題を解決して大成功だったと言うトランプ大統領の主張は、北朝鮮に圧力をかけるのに今後も必要な国際社会の経済制裁への協力を難しいものしてしまう、と批判している。その要点は以下の通りである。

(-Panya-/birdigol/iStock Getty Images Plus)

・トランプ大統領は、「もはや北朝鮮の核の脅威はなくなった。」「「私は問題を解決した。」と述べたが、それは嘘である。北朝鮮の核の脅威は、減っていない。米朝共同声明は、たったの391語で、曖昧なものである。

・北朝鮮は、単に、「朝鮮半島の完全な非核化に前向きに行動する」とのみ約束した。非核化の定義もなければ、タイム・スケジュールも、査察への言及さえない。核兵器に関連する、弾道ミサイルを含む他の問題にも一切触れていない。北朝鮮との合意は、1か月前にトランプが離脱したイランの合意より悪い。

・別にシンガポールでの米朝首脳会談に意味がなかったと言うつもりはない。少なくとも、米朝二国間関係は改善された。1年前には、北朝鮮が核、ミサイル実験を行ない、戦争のリスクもあった。シンガポールで残された課題についても、今後、米朝で合意する可能性もある。

・しかし、現実にはそのような合意は難しい。何故なら、北朝鮮が核兵器を放棄することが疑わしいからである。ウクライナがクリミア半島をロシアに併合されても世界は何もしなかったし、リビアのカダフィ大佐の例も見ている。

・トランプ大統領は、個人的関係が大事で金正恩を信用している、と言った。しかし、叔父や兄も含めて敵を殺す指導者を信用できるのか。レーガン大統領は、「信用しても、確かめよ。」と言ったが、「確かめずに、信ぜよ。」では困る。

・トランプ大統領は、「挑発的」戦争ゲームとして、米韓軍事演習の中止を一方的に決めた。金正恩と取引できたであろうことを譲歩しすぎていないか。

・完全で査察可能な北朝鮮の非核化が早期に行われずに交渉が失敗することもあり得、トランプ大統領は、金正恩に裏切られたと思うだろう。その場合、3つの選択肢が考えられる。1つは、完全な非核化の水準を下げることだが、米国が許さないだろう。そして、経済制裁を強化することには、中国とロシアが反対するだろう。2つ目は、軍事力の脅威を再導入することだが、これには韓国が反対するだろう。そして、3つ目は、ボルトン氏が主張していた軍事的行動である。これはトランプがシンガポールで予期していたレガシーではないが、十分あり得ることである。

出典:Richard N. Haass ‘The Singapore Summit’s Uncertain Legacy’ June 16, 2018, Project Syndicate,  https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-kim-singapore-summit-outcome-by-richard-n--haass-2018-06

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