Washington Files

2019年5月7日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 莫大なロシア・マネーに続き、サウジアラビアによるトランプ・ファミリー・ビジネスへの露骨な金融支援ぶりが、米国で論議の的になっている。米議会調査委員会はとくに、トランプ政権発足以来の中東政策がサウジ・マネーによって左右されてきた可能性に着目、本格的な実態究明に乗り出した。

(CIL868/gettyimages)

 あいつぐ不動産投資事業の失敗で窮地に立たされていた実業家ドナルド・トランプ氏。そこに救いの手を差し伸べたのが、ロシアだったが、他にも資金面で支え続けた国があった。それが、世界屈指の産油国サウジアラビアだ。

 まずその“実績”を振り返ってみよう。

  1. 1991年、財政破たん状態だったトランプ氏は少しでもキャッシュを手元に残すため、自らが保有していた豪華ヨット「トランプ・プリンセス」号(全長93メートル)の売却を決意、結局、サウジのアルワリード・ビン・タラル王子が、2000万ドル(約21億円)の即金払いで購入。しかし、トランプ氏が数年前に手に入れた当時はその3倍近い価格だったという
  2. 1995年、タラル王子はさらに、他の何人かの投資家と共同で、経営不振に陥ったニューヨーク市きっての名門「プラザ・ホテル」の経営権をトランプ氏から3億2500万ドルで譲渡を受けた
  3. 2001年、サウジアラビア政府が、国連本部の真向かいにある超高層コンドミニアム「トランプ・ワールド・タワー」(90階建て)のうち、45階全フロアを1200万ドルで買い取り、同国国連代表部分館として使用開始
  4. 2016年初め、トランプ氏は大統領選出馬表明直後に、対サウジ事業投資計画に着手、「ジェッダ・ホテル・アドバイザーLLC」、「ジェッダ・テクニカル・サービスLLC」など計8社の現地法人をサウジ政府に登録。しかし、その後、トランプ氏が当選したため8社ともすべて閉鎖措置に
  5. トランプ大統領就任式前後の2017年1-3月にかけて、サウジ政府は大規模な祝賀使節団をワシントンに送り込み、トランプ氏が所有する市内の「トランプ・インタナシ ョナル・ホテル・ワシントンDC」に投宿、滞在費・食費など経費として合計27万ドルを支出し、同ホテルの売上向上に寄与した
  6. 2018年、サウジ王室一行が「トランプ・インタナショナル・ホテル・イン・ニューヨーク」にあいついで投宿、このためそれまで3年連続赤字続きだった同ホテルの「2018年第1四半期売上げ」が一挙に13%も改善したと公表された

 トランプ氏は大統領就任以来、これまでサウジとのビジネス取引について、表向き「自分は、ロシアはもちろんサウジ国内に金融面での利害関係は一切持っていない。持っているとする報道は一切フェイク・ニュースだ」とシラをきってきた。

 しかし、それ以前は、むしろサウジとのパイプの太さを自慢していた。2015年、アラバマ州モービル市での選挙集会で「サウジの人たちとは非常にうまくやっている。彼らは私の持っているアパートやマンションを次々に買ってくれている……その額も4億ドル、5億ドル単位だ。そんな彼らを私が敬遠するわけがない。むしろ大好きだ」(ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙)と豪語したのもその一例にすぎない。

 こうした点を受け、下院情報活動委員会(アダム・シフ委員長)をはじめとする米議会調査委員会がとくに関心を示しているのが、トランプ政権発足以来の対サウジ“叩頭外交”(kowtow diplomacy)の顛末にほかならない。

 つまり、これまでトランプ氏側が個人的に受けてきた資金援助の見返りに、アメリカの外交政策がサウジアラビアの意向通りに推移してこなかったかどうか、という点だ。もし今後の真相究明によってその相関関係が立証されれば、最悪の場合、重大な国家反逆罪に問われる可能性も否定できない。

 しかし実際に、トランプ・ホワイトハウスが打ち出してきたこれまでの対中東政策に関連して、サウジ政府が影響力を行使したと疑われるいくつかの具体的事例がある。

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