海野素央の Love Trumps Hate

2019年6月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

再選出馬演説の意図

トランプグッズを販売する白人男性(海野撮影@フロリダ州オーランド)

 トランプ大統領の再選出馬演説は、これまでの繰り返しで新鮮味に欠けるという見方もできますが、実際は緻密な計算に基づいたものでした。

 まずトランプ大統領は演説の冒頭で、前回の米大統領選挙における勝利の喜びを支持者に思い出させて共有しました。次に、腐敗したワシントン、野党民主党及び米メディアを攻撃して、「敵の明確化」ないし「敵の再確認」を行いました。そのうえでこう語りました。

「2020年米大統領選挙でリベラルを再び泣かせよう」と印刷された旗(海野撮影@フロリダ州オーランド)

 「おそらく米史上最高の選挙であったが、彼らはそのレガシー(政治的功績)を潰そうとしている」

 トランプ大統領の意図は、集会に集まった約2万人の支持者を怒らせて、士気を高めることでした。20年米大統領選挙において彼らの「怒りの維持」が、トランプ大統領の課題になっています。

トランプの新戦略とは

テントを張って前日から並ぶトランプ支持者(海野撮影@フロリダ州オーランド)

 16年米大統領選挙でトランプ大統領は、「Drain the Swamp(沼の水を抜け)」と述べて支持者に訴えました。「腐敗したワシントンの政治家や役人を排除しろ」という意味です。

 沼にはボウフラがおり、悪臭を放っているイメージがあります。汚職に満ちたワシントンと腐った沼のイメージを重ね合わせたワケです。トランプ大統領が演説の中で、「沼の水を抜け」と叫ぶと、会場から合唱が起こりました。

 筆者と一緒に午前3時から列に並んだ白人男性のクリフさん(52)は、建設現場で働いていました。彼は父親と米政府の関係について明かしてくれました。

 「5歳のときにベトナム戦争で父親を亡くしました」

 ところが戦死ではなく、米軍がベトナム戦争中に使用した枯葉剤が原因だというのです。

 「私の父はベトナムで枯葉剤が体中についてしまい、帰国後28歳の若さで亡くなりました。米国政府はその真実を語りません。私は政府を信用していません。政府は『沼』です」

 トランプ大統領の「沼の水を抜け」というスローガンは、クリフさんにかなり浸透していました。

ロシア疑惑に関して「共謀は幻想だ」のバッジをつけたトランプ支持者(海野撮影@フロリダ州オーランド)

 さて演説の注目点の1つは、トランプ大統領が「沼」とロシア疑惑の捜査報告書「モラー・リポート」をリンクさせた点です。モラー・リポートはワシントンの腐敗した「トランプ嫌い」の「怒れる民主党員」の捜査員がまとめたものであるというメッセージを発信したのです。単刀直入に言えば、同大統領は「捜査員は沼だ」と言いたいのです。

 米議会民主党はロシア疑惑に関する独自の捜査を続けており、捜査は依然として終了していません。再選の選挙において民主党候補がロシア疑惑を取りあげてトランプ大統領を批判することは充分予想できます。仮にそうなれば、トランプ大統領は「沼」を使って「モラー・レポート」の正当性に疑問を投げかけてくるでしょう。

前日から並ぶトランプ支持者(海野撮影@フロリダ州オーランド)

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