Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年8月27日

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本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏ラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

「失われた20年」を経て、今こそ日本企業からイノベーションを起こすことが必要だ。そのために経営者が持つべき価値観とは何か。気鋭の経営学者に聞いた。

入山 章栄(いりやま・あきえ):早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所を経て、2008年米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。19年4月より現職。(写真・井上智幸)
 

 日本企業からイノベーションがなぜ起きないのか。イノベーションとはそもそも未知なものだ。しかし、日本企業の経営者はえてして、新規事業が成功する確かな根拠や予測数字の「正確性」を求めがちだ。

 むしろこれからの日本の経営者は一種の〝宗教家〟であるべきだと思う。なぜなら、企業がイノベーションを起こすために最も必要なのは、経営者が従業員をはじめとしたステークホルダーの納得できる夢(ビジョン)を語り、それを「腹落ち」させることだからだ。「正確性」よりも「納得性」が重要だ。これを経営学ではセンスメイキング理論といい、グローバル企業の方が進んでいる。例えばユニリーバは「環境負荷を減らし、社会に貢献しながら成長を実現する」というビジョンを持つが、ポール・ポールマン前CEOの話を聞くと、世界がどうあるべきか、それに同社がどう貢献していくかに極めて重点を置いていた。

 この素地ができて初めて、イノベーションを起こすための「知の探索」を組織的に行える。イノベーションは既存の知と別の知を組み合わせることで起こるが、「知の探索」とは、そのために自らの分野とは遠く離れた「知」を幅広く見て、これまでにない知と知の組みあわせを引き起こすことだ。最近注目されるオープンイノベーションや、新規事業部の設立、ダイバーシティ経営なども「知の探索」の一環である。

 しかし、遠くの知を幅広く探すのはコストも時間もかかるし、何より知と知の新しい組み合わせは失敗が多い。だからこそ、多少の失敗があっても知の探索を続けるために、経営者・役員を筆頭にビジョンが従業員に腹落ちしている必要がある。

 近頃、日本の経営者から「最近の若者は夢がない」と嘆く声を聞くが、そうではない。経営者が若者に、腹落ちする夢を見させることが必要なのだ。今後数十年、この組織がどのような形で社会に価値をもたらし、富を得ていくのか、その夢について従業員の腹落ちを得ることで、新たな付加価値を生み出す集団になることができる。私も次代の日本に貢献できる経営学を研究し、納得できる言説を提示して、未来に貢献していきたいと思っている。

現在発売中のWedge5月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。

  
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